みおこし

ロック・スターのみおこしのレビュー・感想・評価

ロック・スター(2001年製作の映画)
3.7
1980年代のピッツバーグで昼間はセールスマンとしてまじめに働き、夜はロックバンド「スティール・ドラゴン」のコピーバンドのボーカルとして活動しているクリス。ある日、「スティール・ドラゴン」のコンサートでその歌声を見初められ、脱退したフロントマンの代わりに抜擢されるのだが…。

まさに"アメリカン・ドリーム"という感じのあらすじですが、実は本作はあのジューダス・プリーストでボーカルを務めていたティム・オーウェンズの自伝が元になっているそう。しかし、プリースト側との折り合いがつかず、一切その辺りを切り離しての映画化の運びになったという、大人の事情があるんだとか(汗)。劇中でも主人公の前任のボーカルが同性愛者として描かれていて、近年カミングアウトしたロブ・ハルフォードをやっぱり意識しているのかな…?
そんな背景も興味深いですが、80年代アメリカのロックシーンの舞台裏を堪能できるので、ハードロック好きは必見の作品になっています。時折挟まれる挿入歌もキッス、モトリー・クルーなど同時代に活躍していたレジェンド・バンドの曲ばかり。さらに、本作に出てくる架空のバンド「スティール・ドラゴン」の楽曲を担当したのは"Owner of Lonely Heart"でおなじみのイエスの中心メンバー、トレヴァー・ラビン。バンドメンバーを演じるキャストもこれまた凄くて、あのジョン・ボーナム(レッド・ツェッペリン)の息子さんや、ずっとオジー・オズボーンと組んでいたギタリストのザック・ワイルドなど、ロックファンなら思わず「おお~!!」となる人選。監督やスタッフのこだわりがひしひしと感じられて、終始楽しく鑑賞できました。プロデューサーにはジョージ・クルーニーも関わっているんだとか。

残念ながら歌声は吹替とのことですが、野心溢れる夢追い人クリスを熱演した若き日のマーク・ウォールバーグがとっても魅力的で良かったです!コンサートのシーンでの長髪を振り乱してのハジケっぷりも本物のロックスターさながらの迫力。夢が叶って喜びながらも、音楽業界の現実を目にして葛藤する姿がまた印象的でした。そしてそんな彼を支える優秀な彼女役には、当時人気絶頂期だったジェニファー・アニストン。ちょっと『フレンズ』のレイチェル役のイメージと被る役柄だったのですが、チャーミングでマークともお似合いでした。
他にもドミニク・ウェストやティモシー・スポールなど、渋めの役者陣が業界関係者を個性たっぷりに演じていて、特にスポールが演じた辣腕マネージャーはオイシイ役どころ!ラストは彼のセリフに思わずじーんとしちゃいました。

楽しい作品だったけれど、バックステージものって音楽業界の残酷なところも描かれるから、観終わった後に手放しで「ロック最高!!」ってなれないのが寂しい(笑)。
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