シズヲ

ぼくの伯父さんの休暇のシズヲのレビュー・感想・評価

ぼくの伯父さんの休暇(1952年製作の映画)
3.0
フランスの喜劇作家ジャック・タチの長編コメディ映画で、その後同監督作で定番化するキャラクター「ユロ氏」のデビュー作。後年ではミスター・ビーンにも影響を与えているらしいのが凄い。好きなアニメ映画である『ベルヴィル・ランデブー』の監督がリスペクトしてるらしいので記念に鑑賞。“ぼくの伯父さん”らしいが、結局ぼくって誰やねん。

ある意味究極的な“コントのための映画”で、避暑地でのドタバタ劇であること以外にこれといったストーリーラインが存在していないのが印象的。ギャグという描写の連続的な運動が、淡々とした演出と共にひたすら繰り返される。台詞の少なさも相まってサイレント映画じみてる。自動車の破裂音やジャジーな音楽、ドアの開閉音にラジオの音声など、奇妙な音響演出が淡白な描写の中で常に存在感を放つ。バスター・キートンらへんの慌ただしさとも異なる独特のテンポと空気感が漂っているので、終始に渡ってシュール。小難しい話をくり返してるインテリ野郎や過去の武勇伝を語りまくる爺さんなど、脇役の存在感もやけに味わい深い。

合うか合わないかで言ったら正直全然合わなかったし、どちらかといえばアメリカ的なスラップスティック&アクションのが見栄え的にも楽しい。それでも本作の不思議な作風は印象に残るし、“バケツが波に流される→波に戻されてくる→また流される……”など要所要所でのギャグのギミックには目を見張るものがある。“何だかんだ良い夏休みだった”と思わされるようなラストも憎めない。
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