蛸

ぼくの伯父さんの休暇の蛸のレビュー・感想・評価

ぼくの伯父さんの休暇(1952年製作の映画)
3.9
寄せては引く波をカットで割った(つまり反復に反復を重ねた)オープニングは、ギャグの基本である「繰り返し」を暗示しているようです。一夏が終わり、エンディングでユロ氏がホテルの他のお客さんたちから「また会おうと」声をかけられるのも、ヴァカンスの(というか夏の)反復性を思い起こさせます。
基本的にはこの映画は、ユロ氏がある避暑地で繰り広げるドタバタ劇でしかないのですが、ジャンルがコメディであり、なおかつ個々のキャラクターが生き生きとしているにも関わらず、猥雑さが少しも感じられないのは端整でモダンな画面構成の為せる業でしょう。抜群に品があります。そのまま絵葉書に出来そうなほど美しい画面がたくさんあります。
この映画の個々のシーンの繋がりは極めて緩やかで、物語らしい物語はありません。主人公は成長しませんし、たいした出来事も起きず、ただただとぼけたドジなユロ氏が周りに迷惑をかけ続ける様が描かれます。結局のところこの出来事の反復性こそが最大の特徴なのでしょう。そのせいである種の退屈さが生じていることは否めませんが…
なんとなく眺めて雰囲気を楽しむのが良いタイプの映画だと思いました。
蛸