イペー

キリング・ゾーイのイペーのレビュー・感想・評価

キリング・ゾーイ(1993年製作の映画)
3.5
強・盗・hell !

銀行強盗をキッカケに、絶体絶命の状況に追い込まれた男女の顛末を描くバイオレンス映画。

ゼッドは腕利きの金庫破り。
昔のツレに誘われて、はるばるアメリカからパリの街。

ホテルに向かう途中のタクシー、胡散臭い運転手に手渡されたコールガールの電話番号。

仕事前の景気付け、早速呼び出した一夜のお相手。
名前はゾーイ、予想に反して可愛らしいフランス娘。
肌を合わせ、ほのかな恋の予感。

仲良く朝を迎えた二人、眠りを突き破るノックの音。

「ゼッドく〜ん‼︎ 待ってたよぅ‼︎ …ていうか出てけよ、ビッチ!」

ノックの主はエリック。
銀行襲撃を企て、ゼッドを呼び寄せた張本人。
男二人と女一人、奇妙な運命の歯車が回り始めるのであります…。

いわゆる"ケイパーもの"の中でも、破滅型の筋書き。
ダメダメな連中がダメダメな計画の末、ダメダメな結末に向かって一直線でございます。

途中のグダグダ会話や盛大なバイオレンス描写。
各所でタランティーノ風味が顔を覗かせますが、その看板は一旦忘れましょう。
名前貸しただけ、との情報もありますし。

というのも、内容の割に演出が生真面目。オフビート感を生み出すまでには至ってない。絵面もあまりキマッてません。
全体として、どうにも惜しい仕上がりでございます。

本作を楽しむポイント。
ゼッドを演じたエリック・シュトルツ、ゾーイを演じたジュリー・デルピーの魅力も確かにあるでしょう。
しかし何と言ってもエリック役のジャン=ユーグ・アングラード!

エイズを患って自暴自棄、常にラリッた状態で感情が乱高下、全方位に怒りを発散しつつも急に仲間想い…。
水を得た魚のごとく、迷惑王子エリックを演じ切っております。

邪魔者は容赦しねぇ!女だからって手加減しねぇ!親友だからってカンケーねぇ!
無尽蔵なヤケクソパワーでもって、周囲を地獄に変えるエリック。

観客である我々は彼の仲間たちと同じく、アホーの様に口半開きで事の推移を見守るのみ。
破れかぶれな強盗計画に終止符を打つのは警察なのか、ゼッドなのか、それとも…。

先程申し上げた通り、「タランティーノ」とか「レザボアドッグス」を連想しない努力こそ肝要!
まっさらな気持ちで鑑賞に臨めば、風変わりな犯罪映画として評価できるハズ…!

…『ヘイトフルエイト』楽しみだなぁ。
あまり期待値を上げ過ぎないように、とは思うんですが、タランティーノ作品は特別なんですよねぇ…思い入れが勝っちゃう。
部屋にレザボアのポスター貼ってましたしねぇ。
つまり、"製作総指揮"には気をつけて下さい…。
イペー

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