平野レミゼラブル

ライオン・キングの平野レミゼラブルのレビュー・感想・評価

ライオン・キング(1994年製作の映画)
3.7
このスカーおじさん、スケベすぎる……!

そんなスカーおじさんの色気と駄目さに絆されるアニメ版である。なんだろうね、基本的に全てを見下していて自分勝手で国を荒廃させちゃうような狡猾で無能な駄目悪役なのに感じちゃうこの魅力は。ザズーに暗い曲じゃなくて明るい曲を歌わせた辺り、「自分なら統治出来る!」と信じてたのにそうはならなかった現実への逃避は間違いなく根底にあるだろう。『イッツ・ア・スモール・ワールド』が嫌いなのは、自分の器の小ささを指摘されてるようなタイトルを嫌ってのことかもしれない。自意識過剰、承認欲求、自己正統化、もはやスカーおじさんのコンプレックスの塊っぷりには愛おしさすら感じる。彼にこそ「ハクナ・マタタ」の教えが必要だった。

とまあスカーおじさんの魅力から話してしまったが、実際本編の良さなんて改めて語るまでもなくだから仕方ない。ミュージカルの楽しさ、動物達の自由な動きの楽しさ、虫の動きの気持ち悪さ、そして「現実逃避」を終え「背負うべき義務の重さ」を飲み込みながらの「継承」の物語。家父長的価値観から保守的、時代錯誤ともリメイクが創られた現在言われていたがそうではないと思う。「ハクナ・マタタ」の教えを経て自由に生きた上でシンバが決断した結論が『ライオン・キング』だからだ。自由というのは素晴らしいことだが、それに甘んじてしまうだけではスカーおじさんのように国を荒廃させてしまう。自由に生きながらもどこかで折り合いをつけて、自分の義務を見つめ直す。これはどの時代でも必要な普遍的な考え方のように思う。だからこそ『ライオン・キング』はいつの時代でも受け入れられる名作であるのだろう。