イルーナ

スリーピー・ホロウのイルーナのレビュー・感想・評価

スリーピー・ホロウ(1999年製作の映画)
4.0
アメリカ人なら誰もが知っているという怪談『スリーピー・ホロウの伝説』。
ゴシックホラーというジャンルの大ファンであるバートンに、相棒のジョニデ。
そしてヒロインはお化け一家の長女ウェンズデーを演じたクリスティーナ・リッチ。
これだけで期待感が増しますね。

何といっても圧倒的なのは、もはや絵画と言っていいほどの舞台美術。
ほぼ全編にわたってモノクロかセピア調の陰鬱な画面なのですが、どこかおとぎ話のように幻想的。
暗い絵作りだからこそ、夢のシーンの美しさや血の色の鮮烈さが際立つ。照明もまるでおどろおどろしくも朧げな感じで絶妙ですよね。
首なし騎士の剣は地獄の炎の熱を帯びているから、斬られた傷口は焼き切られたように塞がっているとあったけど、もしかして血しぶきを見せないようにするための工夫だったのかな?
そこに色どりを添えるのは、科学の信奉者イカボッドの扱うユーモラスな小道具の数々。
『シザーハンズ』の時といい、バートンは小道具やギミックへのこだわりが本当に素敵。
そして常連スタッフのリック・ハインリックスのセットデザインとコリーン・アトウッドの衣装デザインは何度見ても素晴らしい。
バートンの世界観をあれだけ再現できるということで、つくづく不可欠な存在だよなとひしひし感じます。

1799年という時代の変わり目。
未だに迷信が信じられ、拷問による自白がまかり通る中で、イカボッドは科学捜査の重要性を訴えるも受け入れられず、僻地の村スリーピー・ホロウへと送られる。
そこで起きている首切り殺人の犯人は首なし騎士だった!
科学が通用しない相手に、果たしてイカボッドはどう立ち向かうのか?
さらに彼は、魔女の容疑をかけられた母親を狂信的な父親の手によって処刑された過去を持っていた。
そのため、迷信と思い込みによって相手を裁くことが許せず科学を重んじる道に進んだ……
こうして設定だけ見ればかなりカッコいいイカボッド。しかし彼にはとんでもない弱点が。
それは、とにかくよく気絶すること!私が数えた限りでは5回は気絶していました。
一方でカトリーナは2回。ヒロインの倍以上気絶しているという虚弱っぷり。スペランカーかな?
しかし、長老たちの人物相関は一回見ただけで把握できた人少ないんじゃないでしょうか……?

ちなみに原作も読んでみたんですけど……驚いたことにホラーらしいシーンが終盤しかない!
何なら、それまでは明るくのどかな情景描写がずっと続く。怪談というよりおとぎ話、寓話といった感じ。
つまり本作は、ほぼ登場人物の名前を借りただけの全くの別物ということに。
この映画から原作を読んだ人は、その落差に間違いなく驚くんじゃないでしょうか。

アニヲタwikiにまとめた記事
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/53001.html
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