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忍びの者のkoyamaxのレビュー・感想・評価

忍びの者(1962年製作の映画)
3.3
市川雷蔵主演ということなのに、ナンですが、、
雷蔵演じる忍者五右衛門はボスの奥さんにほだされ不倫したり、不倫の弱みを握られて窃盗や信長暗殺を行う事になったり、不倫相手を(故意ではないものの)うっかり井戸へと落としてとしてしまったりする一方、別の女と「ここではないどこかへ旅立とう」と夢見てたりして、主体性が無い上、行動原理にイマイチ共感できるものがありません笑。

ここでいう忍者という存在はなにかの能力者というよりも、組織の中の一人のスパイとして描かれているので、全体のトーンとしては渋めです。

屋根裏に忍び込む緊張感や、その屋根裏から糸を垂らし、下で眠る信長へ液体状の毒を垂らすという「屋根裏の散歩者」的なシーンなどはスパイ映画的な楽しさがあります。
一方でマキビシや手裏剣など実質的な描かれ方をするものの、その使い方それでいいの?!と、ところどころ突っ込めるところも多く、サスペンスフルな展開というよりは、行動の天然展開ぶりを楽しむ映画なのだということが徐々に明らかになっていきます笑


この映画のもう一人のキーパーソンは伊藤雄之助演じる伊賀忍者の頭領 百地三太夫ですが、この人が本当に見た目から行動まで胡散臭いことこの上ありません笑

この人の胡散臭さを観る映画といっても過言ではない気さえします。


序盤からこの伊藤雄之助演じる百地三太夫には実は裏の顔があると明かされるのですが、、

観客には事実を教えつつ、劇中内では正体が明かされていない。というかたちで展開します。このネタばらしはお話としてはあまり意外性がないので、もう少し後にとっておいてもよかったのではないかなとおもいました。


個人的に以下のシーケンスがこの映画最大の謎でした笑

途中、三太夫の命令により信長のアジトへ一人走り向かう五右衛門。

三太夫からのモノローグが入ります。回想モノローグではないはずですが、、
走る五右衛門へ「もっと突っ走れ!その角は右へいくんじゃ、そこを左じゃ!その川じゃ、えーい。ぐずぐずせず突っ走れ!」

謎の位置からのリアルタイム命令モノローグが入るのですが、あの声はなんだったんでしょうか(^^;


テーマとしては組織に生きる忍者の悲しみが描かれているとおもいますが、
個人的には真面目な雰囲気で大ボケをかます映画という位置づけです。
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