ショッキングな題材の割に、重厚な描写の積み重ねが足りず、何が言いたいのかわからなくなっていると思う。
というのも、脚本的に語り手となる小説家と校長の存在がまず意味不明。
その語りに言及する描写が存在しない。
続いて、遭難した船長船員の物語も見たまんまのこと以外は起きないので伏線もなければ、舞台劇以上の隠喩もない。
と思っていると、法廷劇になるが、これもいわゆる法廷劇としてのやり取りの応酬の中で炙り出される真相などはまるでない。
むしろ洞窟では寡黙だった三國連太郎が、まるでキャラクターが変わったように喋り出すので同一人物に見えない。
音楽の物々しさの割に、ひかりごけの合成がうまくいっていないので、「怪しく光るひかりごけ」にもなり得ていなかったのもものすごく残念だ。
そして、人肉を食べてもないやつが、こちらのことを裁けるのか?っていうのは、もう少し掘り下げて描かないと、伝わらない。
誰にも何もわからないんです、ということをわざわざ描かれる上に、若干の天皇制批判みたいなものもあるので…全体的にやはり消化不足。
概ね出演者の演技はよかったのだと思うけど、その良かったにべったり頼りきりでも、シナリオや、演出がグダグダなのでどうにもならないと思う。