かすとり体力

レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまでのかすとり体力のレビュー・感想・評価

3.8
「夫婦という名の地獄」系映画(?)の極北として名高い本作、ついに鑑賞しました。

おぉ…地獄具合が想像を上回る…。

本作の夫婦喧嘩シーンはもうほんと壮絶。
映画内での夫婦喧嘩は数多あれど、ここまで本質的に相手の人格を否定し、破壊しようとする応酬は初めて見た…。

「えぇまじでか…それ言葉にしたら終わりだろ…」の連続。

そしてこういう役をさせたときのディカプリオの素晴らしさよ。早口で捲し立てるの似合い過ぎ。

そして「うわあ、俺も口喧嘩のときこんな言い方しちゃってるわぁ…」という同族嫌悪感もイヤと言うほど味合わされた。

やはり、夫婦喧嘩において「論理的に自身の正当性を主張する」という行為の意味のなさな。
だって相手はそんなところで怒ってないんだから。そもそものゴールが違うという。でもまたやっちゃうという。。。

あとこれ、よくよく観ると、「恋愛」」「夫婦」もの映画ではないんだよね。

同じタイプの名作映画は『ブルー・バレンタイン』他いくつもあるが、これらは「恋愛」とか「夫婦関係」が持つ性質が残酷な時間の流れの中で変容し悲劇的な結末をもたらす、という意味でまさに「恋愛」「夫婦」映画。

しかし本作、本質的には「恋愛」などの要素は関係ないと思うの。もう少し普遍的な「平凡な人生というものに人はどう折り合いをつけていくのか」というテーマ、そしてそれに失敗したときに何が起こるのかについて、「夫婦関係」という「演出」を通じて、よりその悲劇性を増して描写しているものと見た。つまり、本作における恋愛や夫婦関係は、あくまでもテーマを語るための触媒に過ぎないという意見です。

あと、最後のエイプリルの選択、この物語では善悪を超越したものとして描かれているけど、それって本作では子どもたちの影が薄いからに過ぎないと思うの。子ども達のことを考えると、エイプリルの選択の「倫理的な間違い」の色が強くなってくるなあと。意図したものでは無いにせよ、当然リスクは認識していたはずでしょう。フランクにも当然責任はあるけども、それはあくまでも彼女の無罪をもたらすものではなく、情状酌量の材料レベルの話です。


とまあ、長くなりました。

見てしまったら最後、こんなふうに色々考えたくなる、話したくなる作品です。

傑作。
かすとり体力

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