都麦

ストップ・メイキング・センスの都麦のレビュー・感想・評価

4.0
おいみんな、頭を冷やせ。冷静に考えろ。こいつの動き、よくよく見ると結構ダセェぞ。

と、ファン各位に刺されそうな言葉からレビューを始めてしまいますが、一曲目の転びそうなパフォーマンスとフゥフゥフゥフゥ言ってるところで思った。デヴィッド・バーンの動きがかっこいいんじゃなくて、何をしててもデヴィッド・バーンはかっこいい。

尾崎豊。宇多田ヒカル。YOSHIKI。玉置浩二。マイケル・ジャクソン。
思い返せば、人生で出会った全ての“偽物じゃないカッコいい”はみんなそうだった。彼らの動きを真似したところで我々は彼らのように輝けない。宇多田ヒカルのautomaticの椅子の上の揺れ方、あれを真似した高校時代のクラスメイトは赤べこにしか見えなかった。玉置浩二のモノマネをして歌うと人は殺される。
彼らは、決して動きがかっこいいわけではない。彼らそのものが含む圧倒的なスター性、主人公感、存在感、色気、美しさ、なんと表現するべきかわからないがそれらが他者の両目を惹きつけて離さない。気づけば我々は彼らを目で追っている。ダサい動きをしているはずなのに、自らのカッコ良さを信じて疑わないどころか自らがカッコいいことを問題とも捉えていない彼らカリスマは、圧倒的に自信あり気な、なんの迷いもない眼差しをこちらに向ける。非常に不可解な動きをしながら。

そうすると我々は、間違っているのは僕らの常識であり、本能のままに動く彼らの体や声が正しいのだと、まるで審美眼を試されているかのような気持ちになり、丸め込められる。そして我々はこう思う「デヴィッド・バーン、カッコいい……」と。

その状態こそまさにSTOP MAKING SENSE。俺たちに彼らのことは分かりっこないのだ。解せない。解せない。解せない。ただ両目は釘付け、心はときめき、体は踊り出す。もう無理にMAKING SENSEしようとしなくて良いのだ。というかそんなの必要ないのだ。目の前の圧倒的なカッコよさを前に我々は為す術なく魅了される。

さあ俺の後光の前に跪け、と言わんばかりのありえない肩幅スーツは世界史に出てくるそれ。サイズの測り方教えてやろうか。クソが。俺よりカッコいいヤツらは今すぐこの世から消えろ。4.0点。
都麦

都麦