YasujiOshiba

ストップ・メイキング・センスのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

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昨日はこのDVDを見る。ちゃんと通してみたことがなかったのだけど、
体調がよろしくなかったにもかかわらず、なんどか目の覚めるような演出を楽しめた。

まずはデヴィッド・バーン。今更ながら見直した。ずっとスタジオの人だと思い込んでいたのだけど、実に実に、ライブの人だったんだね。パフォーマンスが個性的だとか、歌が上手いとか、演奏がすごいとかいうのではなくて、総合的にステージを作り上げてゆく人だったんだね。

ジョナサン・デミの演出もよかった。昨今は、アホみたいにカメラを揺する音楽番組が多いけど、手持ちのカメラも適度に適当な場所できっちりと利用しながら、しっかりと全体の枠を捉える映像には嫌味がなく、ときにはものすごく映画的なカットがあったりして(蛍光灯の演出の場面とかね)、楽しめました。

個人的には、ティナ・ウェイマス(Tina Weymouth)のベースを堪能。奇抜なことをやるわけではないのだけど、すごく曲にあったリフで、バンドの音を支えているのがよくわかる。演奏しながらのステップのなかには、カニみたいなモンスターステップもあってギョッとなるけど、そんなのは可愛らしいもの。驚異的なのはベースの安定性だね。歌っちゃったりするけど、それはまあご愛嬌。

Stop making sense って「思わせぶりはやめようぜ」というような意味なのだろう。だからこそ、バーンはラブソングを歌わない。ラブソングは大きすぎるから、もっと日常的な、家とか川とかお金とか、細やかなことを歌うっていうわけね。あのビッグ・スーツもこの文脈にあるのだろうね。バーンは歌舞伎や能や文楽のような日本の舞台に影響されながらも、どこにでもいるただのサラリーマンのスーツで「カブいて」みせてくれたというわけなのだ。

1984年のパフォーマンスというのもまた、意味深なのだけど、ここは「思わせぶりはやめて」おくべきだよね。
YasujiOshiba

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