Jeffrey

御法度のJeffreyのレビュー・感想・評価

御法度(1999年製作の映画)
2.8
「御法度」

冒頭、幕末の京都。血気盛んな若き男たちの集団〜新選組〜に一人の美少年が入隊する。美貌と嫉妬と噂、局中法度、軍中法度、抗争と殺戮、戒律。今、狂気を帯びた混乱に陥っていく…本作は大島渚が司馬遼太郎の短編小説集"新選組血風録"収録の「前髪の惣三郎」と「三条磧乱刃」が原作を一九九九年に監督して、映画デビューした松田龍平を一躍有名にさせ、自らも十三年ぶりの作品であり、闘病生活から復活した一本である。この度DVDを購入して再鑑賞したが面白い。幕末の京都を舞台に、新選組を男色の視点で描いた時代劇で、大島が亡くなるまでこの作品以外に撮っていないので遺作にあたる。

音楽は坂本龍一、その他キャストには浅野忠信、北野武、武田真治、吉行和子などが顔を合わせている。ナレーターは佐藤慶である。本作は国内ではブルーリボン賞などを受賞しているが、カンヌ国際映画祭では受賞ならず、その後に大島の病状が悪化して、二〇一三年に亡くなる。その前年には若松孝二が交通事故によって亡くなっているため、なんだかなぁと言う気持ちである。二人とも非常に監督として仲も良かったし、こうも立て続けにと言う気持ちである。松田龍平はこの作品で新人賞などをその年の賞を総なめにして一気にスターダムにのし上がった。ちなみにこの作品ファッションモデルや実業家の神田うの、の初映画出演でもある。今回DVDの特典でキャストのインタビューがあったのだが、松田龍平が若すぎて男の俺が言うのもアレだけど、めちゃくちゃ可愛い。それと北野武のインタビューもめちゃくちゃ面白かった。大島渚が俺の後ろに立つんじゃねー、監督が何人もいるようでやりづらいとか言ってて、北野武(監督)は今のところ渚さんに怒鳴られてねーからよかったわ、でも今日まだ初日だからなぁと笑いを誘っていた。それと若き日の武田真治も本作でブルーリボン賞受賞して、女性のインタビュアーの人に感想を聞かれて、恥ずかしそうに話していた。彼って確かジュノンボーイでグランプリだったか準グランプリだったかで受賞してたよな?それで芸能界デビューしたんだっけな?

さて、物語は幕末の京都。血気盛んな若き男たちの集団〜新選組〜に一人の美少年が入隊する。彼の妖しいまでの美貌をめぐって、男たちの中をかけめぐる嫉妬と噂、そして憶測。局中法度、軍中法度と言う厳しい戒律のも、抗争と殺戮に明け暮れていた新選組が、狂気を帯びた混乱に陥っていく…と簡単に説明するとこんな感じで、常にセンセーショナルな話題とともに時代を生きてきた大島の最後のー作品である。法度とは掟わ戒律、禁令、禁制、特に近世、幕府が旗本、御家人、庶民の支配のために発したものを言う。そんで御法度とは禁令の尊敬語で、御禁制、転じて一般に禁じられている事を意味するようだ。とにかく若き日の松田龍平と浅野忠信が良い芝居をしてくれていた。やはり最後の作品になったこれでも大島渚は日本の地位の象徴的な桜の木をクライマックスでぶった切る場面は、果たして日本国を表すのか、もしくは天皇を表すのか、彼の作品に桜と言うのは切っても切れない存在である。いや関係性と言うべきか、しかしながらこのホモセクシャル的な雰囲気漂うエロさがたまらないし、ほんの一瞬しか出てこなかった神田うのも非常にインパクトを残していた。

時代とともに滅びた殺気纏うテロ集団とも言うべき新選組を大島渚が選んだ理由はどうなのかわからないが、彼らしいなとは思う。ホモセクシャルと言えば「戦場のメリークリスマス」(この作品の前作の映画)も結局はホモ的な要素があった。大島渚ホモに目覚めたのかと一瞬思ってしまった(笑)。それにしても殺伐としている映画だなと思った。全体的にエモい映画であった。そして最後に、DVDの大島渚のインタビューで、ソファーに座って杖を置いて懸命にインタビューに答えている大島渚を見ると少し胸がいっぱいになってしまう…。若松孝二、実相寺昭雄、高林陽一、黒木和雄、大島渚とATG映画を盛り上げてくれた作家は殆ど故になっているが、唯一今も生き残っていると言えば吉田喜重、篠田正浩くらいか…。
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