てづか

素晴らしき日曜日のてづかのレビュー・感想・評価

素晴らしき日曜日(1947年製作の映画)
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「晴れてきた。お茶でも飲もうよ」

散々嫌な思いや惨めな思いを積み重ねた一日の終わりにこの一言があったら幸せ。

戦争孤児の子が10円と引き換えにおにぎりをもらうシーンがあることで、戦争の残り香が確かに感じられる

ほーんとしみったれたデートなのに、それをちゃんと映画として成り立たせてることが凄いな〜って思う。

嫌な事と良い事と、人生そうやって振り回されることが多いけど少しだけ希望を持って進んでみたいと思えるような映画でしたね。

彼女、けして美人とは言えないけど素敵な人ね。
私はああはなれないなあ(笑)
でも、あそこまで色んなことがあっても一日中一緒にいられるような人に出会ってみたいな。

この映画の彼氏はいささか情緒不安定に思えるところもあるが、そうなったのは誰のせい、何のせいだという問題もある。七人の侍における百姓ずるい問題と同じで、お金があれば、世の中が彼に優しければ、戦争がなければ、そうはならなかったのじゃないかと…

ラストの第四の壁を超えた訴えには胸を打たれた。観客は傍観者でいてはいけない。黒澤監督が映画の力を信じてこれを撮ったなら、観客はそれに応えなければ。世の中の冷たい風に同調しないよう、あたたかい人間で在らなければ…

ラスト、無人のコンサート会場にもクラシックが聴こえる。「また次の日曜日」と未来への希望を口にする彼女。電車の音は聞こえるし明かりはあるのに、電車そのものは映されない。壮大なクラシックとともに浮かび上がるタイトルは「素晴らしき日曜日」

ああ、なんとも粋な映画やなあと思わされた。
てづか

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