もっちゃん

素晴らしき日曜日のもっちゃんのレビュー・感想・評価

素晴らしき日曜日(1947年製作の映画)
3.6
敗戦後の日本の風景と心情を描く黒澤明の佳作。第四の壁を破る奇抜な演出を当時にやってのけたのは素晴らしい。

敗戦後に復員した男とその彼女の「35円の日曜日」を描く。彼らは貧しい中、どうやってそのデートを楽しもうかと模索するが、ことごとく「貧しさ」が立ちはだかる。敗戦後の日本においては貧しい人にかまっていられるほどの余裕がなかったのだ。

「戦争にいく前とはずいぶん変わった」といわれるその男は、「夢でおなかは膨れない」といつも弱気でマイナス思考である。彼を見かねた彼女がなんとか励まそうとするが、彼女自身もふさぎ込んでしまう。

完全に閉塞的な世の中で、なすすべのない彼らは最後に観客に救いの手を求める。それが終盤の「第四の壁」を破る演出である。観客に「お願いします」と懇願する彼女はそこまで追い詰められているかという印象を与える。その訴えの切実さは時代を超えて胸に響くものがある。