お豆さん

ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団のお豆さんのレビュー・感想・評価

3.5
怒れるハリーのダークサイドが炸裂する第5巻。これまで「賢者の石」や「秘密の部屋」など、クリアすべき明確な困難があり、わかりやすく展開してきた物語も、ヴォルデモート復活が確実(仮)となった今回は、「予言」という抽象的なものをめぐっての攻防ということで、どこかつかみどころがない。また、悪夢にうなされるハリーは孤独を深め、ダンブルドアに拒絶されているという思いから反抗的になり、とにかく不愉快。なにより原作は長く、なかなか読み終わらず苦労した記憶があったので、実は映画版もさほど期待していなかった。ところが、大胆に削除・改変された本作は、これまでで最も娯楽映画らしくまとめられており、意外にも見やすかった。いくつか、今後の展開に影響しそうな変更もあったが、本作以降のすべてをデヴィッド・イェーツが監督を務めていることだから、つじつまは合わせてくるのだろう。

「ハリー・ポッター」シリーズの素晴らしいところは、10歳から17歳までの少年の成長を見守ることができる点だと思う。思春期独特の傲慢さを見せることにも躊躇がない。これまで普通の少年として生きようとしてきたハリーが、14歳にして「死」に直面し、さらにヴォルデモート復活を信じようとしない大人たちから嘘つき呼ばわりされることにより、自分の宿命を意識し始める。普通でいたいのに、普通でいられないというイライラが、15歳のホルモン成長と不幸にも重なって、付き合わされる側としてはたまらないが、ダニエル・ラドクリフの育ちの良さのおかげか、映画版はソフトで助かった。

2017. 6
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