Joy Divisionのフロントマン、イアン・カーティスの伝記映画。
孤独、自分への憎しみ、他者への不信、実存の不確かさの不安、この映画を観ても、イアンの内面は理解できないだろう。
誰も他人の頭の中や感情など理解できない。僕たちは推測し、自己の推測を妄信することしかできない。
どれだけ自己を、他者を、世界を妄信することができるかで生き方は変わってくるが、イアンのような繊細な青年は妄信することなど出来なかったので、自分の不安を「コントロール」することができなかった。
イアンに限らず、多くの精神的問題はこの「コントロール」の問題であることをこの映画は教えてくれる。
分からないこと自体が自己や世界の本質である。
デヴィッド・ボウイのThe Jean Genieを聴きながら歩くイアンのジャケットに書いてあるHATEの文字。
まるでイアンが世界や他者を憎んでいるように見える。しかし、映画が進むうちにイアンが憎んでいるのは自分自身であることに気付く。むしろイアンは他者を愛していた。自己へのHATEと他者へのLOVEの乖離、そのLOVEがイアンと他者、世界を引き裂いたのだと思う。
Love Will Tear Us Apartという曲が表すように。
サム・ライリーの取り憑かれたような歌唱も本当に素晴らしいので未見の方は是非。