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リプリーのエディのレビュー・感想・評価

リプリー(1999年製作の映画)
2.7
名作「太陽がいっぱい」のリメイクで、愛と富を渇望する若者の犯罪と苦悩を描いているのだが、元映画ではほのかにしか感じなかった同性愛的嗜好がこの映画では強く出ている。それが人物描写の深みになるならいざ知らず非常に平坦で浅い描写で同性愛を描くだけなので、ひたすら気色悪い映画になってしまっているのが残念だ。

貧乏青年リプリーは日銭稼ぎのパーティで、造船業のオーナーで大富豪のグリーンリーフと知り合う。彼が借りて着ていた大学のジャケットから、リプリーが息子ディッキーと同窓と勘違いしたことで、リプリーはグリーンリーフと急速に仲良くなる。
ディッキーが仕事もせずにイタリアで放蕩三昧の日々を過ごしていることに頭を痛めていたグリーンリーフは、高額の謝礼でリプリーをイタリアに送るのだがリプリーはディッキーに取り入ることに成功し、贅沢三昧の日々を過ごすことになる。

しかし、飽きっぽいディッキーはリプリーのことを邪険に扱うようになったことで、リプリーは咄嗟に犯罪を犯してしまった。。。

富を渇望する貧乏な主人公の野望を全面に出した「太陽がいっぱい」に対し、この映画はリプリーのディッキーに対する同性愛的な感情を必要以上に打ち出している。しかし、それぞれの人物描写が平坦でマッドデイモン演じるリプリーが同性愛者という設定も唐突なので、関連シーンに深みがない。単なる痴話げんかや気色悪い同性愛ストーカーにしか見えないのだ。

そう、この映画の主人公であるリプリーがひたすら気色悪く共感できる要素が非常に少ないのがこの映画の問題だと思う。マッドデイモンは好きな俳優だが、そういった性的嗜好を感じさせないのを無理して演じているせいか、寄生虫のように気持ちの悪い奴に成り下がっているのでこの映画はミスキャストだと思う。

同性愛を打ち出した一方で、貧乏人が他人に成り代わってまで得ようとする富への渇望の描写が決定的に足りない。

グリーンリーフとの接点がたまたまだし、成り上がりたいというモチベーションがあまり感じられないので犯行が過失に思えてしまうし、その後の行動も計画的には思えないのだ。

その結果、元映画の衝撃的なラストとは程遠い結末になってしまう。付きまとわれているのは死人ではなく愛した男の亡霊か?

差別化しようとしたのかもしれないけど、なんでこういう設定にしたのか非常に不満が残る。
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