ねじまき

沈まぬ太陽のねじまきのレビュー・感想・評価

沈まぬ太陽(2009年製作の映画)
3.5
200分超えの大作ということもあり、なんとなく敬遠していた作品。でも、見てよかった。冒頭、一人旅の小学生や、赤子を抱いた新婚夫婦や、待っててねと幸せそうな顔で電話していた父親、心優しいスチュワーデスやらが、飛行機墜落により全員死ぬ。凄まじい始まり。
怒り、悲しみ、途方に暮れる遺族との対峙が本作のひとつの柱。


そして、本作のメインは、恩地元という企業戦士の生き様。こちらは名前は違うが、ほぼ脚色なしの実在の人物。リアル半沢直樹。会社のため、同僚のため、そして社会のため、と己の哲学を貫き奮闘するが、経営陣から疎まれ、懲戒人事を連発される。自分だけならまだしも、家族や一緒に戦ってきた仲間たちまでもが、不幸になっていく。
「私以外の人間には、懲戒人事をしないと約束したじゃないですか!?」恩地の悲痛な訴え。それでも、会社を辞める、という選択はしない。あくまでも組織の人間として戦う。それもまた、彼の哲学なのだ。
池井戸潤が好きな方は、本作もまず間違いなく、はまると思う。

長い年月の果て、ようやく日本に帰ってきた恩地を、今度は「ジャンボ機墜落事故」という超ド級の大事故が襲うのだから、信じられない。


対照的なのは、行天。恩地の労働組合時代の盟友だ。彼は、賢い立ち回りで次々出世していく。しかし、彼の心の中にはいつも「恩地」がいる。自分は恩地に負けているんじゃないか、という不安を拭えない。恩地という人間を、軽蔑しつつ恐れ、見下しつつ嫉妬している。恩地の存在は、自分を小さい人間にさせる。それが許せない、といった感じだ。だからどうしても恩地を悪の道(自分の道)へ引きずり下ろしたいのだ。

恩地と行天。
二人の魅力的かつ対照的なキャラクターの生き様が、おもしろい。片方は大出世、もう片方はとことん追い詰められる。


悲しみ、疲弊し、絶望し、うまく立ち回ったり、対立したり、信念を貫き、または妥協し、耐え忍び、反発し、裏をかき、騙し騙され、不正に金を作り、愛人までもスパイにし、やれ出世だ人事だ、と一喜一憂しているうちに時が経つ。

生きるとは、一体なんなんだ?
なんなんだ、生きるとは?

ラスト。
果てしなく荘厳なサバンナで走り回る象やシマウマの壮大さと、オレンジに燃える太陽の残照に、心がガーンとなった。


公開:2009年
監督:若松節朗
出演:渡辺謙、三浦友和、松雪泰子、鈴木京香、石坂浩二、宇津井健
受賞:日本アカデミー賞最優秀作品賞ほか。