久しぶりに刑務所内で完結するハードな囚人ものを目指そうとした心意気だけは立派だが、どうも時間内にシナリオの場面を全部撮りきれなかった、あるいは時間の関係でシナリオを削らざるを得なかったとしか思えないほどお粗末な出来。途中で藤田進の保護司が消えてしまうのはどう考えてもおかしい。重要なシーンを見逃したのかと不安になりながら見続けていたが、殴り込みを止めようとする星由里子に健さんが「お父さんにすみませんと伝えてくれ」と言っているので生きてはいるらしい。ただ消えただけ。なぜそこにいない。
浮気した妻を刺し殺した過去を思い出して泣きながら寝ている田中邦衛とか、死んだ目のままライフルを撃ち続ける黒沢年男とか、気になりすぎるシーンはあるのに、これらの伏線は完全放置で回収せず。囚人の暴動・反乱というシリーズいちの大事件だというのに、俳優の熱演が無駄になっているのがとにかくもったいない。
せっかく物語の構造を変えようとチャレンジしたのに、仲間を殺されて殴り込みをするおきまりのルーティンに縛られて撃沈。吉野ママが初めて悪役グループの一員として登場したことだけは記憶しておきたい。
