とあるカフェで、男が女を殺した。犯人は女の死体に縋りつく。それを警察が引き離し連行する。
現場に偶然居合わせたブルジョワ夫人のアンヌにとって、その事件は忘れられない出来事だった。二人はどういう関係だったのか、動機はやはり愛憎のもつれか……。
ある日アンヌは、事件が起きたカフェで、一人の青年と知り合う。何か惹かれるものを感じ、青年に会いにカフェに足を運ぶようになるアンヌ。話題は常にあの殺人事件について。しかし、今の生活から脱却したいと願うアンヌは、次第に禁断の愛を求め始める……。
マルグリット・デュラスの小説『モデラート・カンタービレ』の映画化。
身近で起きた殺人事件をきっかけに、自分の人生を見つめ直す人妻の物語。平たく言えば不倫のお話。なんていうと身も蓋もないが。
アンヌはあの女性のように、愛する者の手で殺されたかったのか、それともただ新しい恋愛を求めていただけなのか。最後のあのすさまじい慟哭から察するに、個人的には前者かなあと思うのだが。
それにしても『雨のしのび逢い』という邦題は何なんだろう。雨一滴も降らなかったけど。