LalaーMukuーMerry

キャバレーのLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

キャバレー(1972年製作の映画)
4.4
タイトルとジャケットの絵からかってに想像して、この作品をずーっと避けていた残念な私。舞台は1931のベルリン(ナチスが政権をとる2年前)、とても静かな始まり、…??? 思ってたんと全然違う。ナチが台頭してくる不穏な時代の雰囲気に、男と女の込み入った事情と屈折した恋愛模様を絡ませた、とても素晴らしい作品でした。時代背景が「サウンド・オブ・ミュージック」と似ているが、あっちが家族みんなで楽しめる雰囲気なら、こっちは大人の味。
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歌は舞台のショーだけなので、ミュージカル特有の不自然さは全くなく、ストーリーにすんなり入っていけます。主演のライザ・ミネリもいいけれど、ショーに関してはMCのジョエル・グレイが凄かった。
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ナチへの反発心はわかるから、「退廃は蜜の味」と歌うのも共感するのよ。
難しい時代を生き抜くために、「この世は金次第」と歌うのもわかるのよ。
けど時代背景を忘れて、こんな言葉だけ一人歩きさせるわけにはいきません
…などと書くと融通のきかない堅物と思われるかな
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こういう抵抗しかできなかった時代が悲しいし、彼らの叫びが胸に響いて切なくもある。その後の歴史を知っているから、ショーの華やかさと対照的な静かなラストの幕引きに押し黙る。
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「人生はキャバレー!」
誰もが奔放に生きることができる時代を願って