イチロヲ

キャバレーのイチロヲのレビュー・感想・評価

キャバレー(1972年製作の映画)
4.5
ベルリンのキャバレーに従事している女性歌手(ライザ・ミネリ)が、差し迫っているナチス党の驚異を余所にしながら、豪奢な人生模様を送っていく。ナチスの反ユダヤ主義が過激化する直前を舞台にしている、ミュージカル映画。

突然に歌い始めるスタイルではなく、キャバレーの舞台上で登場人物の心情を表現する形式。「キャバレーの人間」から脱出不能に陥っている主人公の粉骨砕身ぶりと、ユダヤ人の令嬢のメロドラマを平行線で綴っていく。

本作の醍醐味は、登場人物がナチスへの注視を怠っているところにある。「政治への無関心」を危惧する人物、危惧しない人物の温度差が精緻に描かれており、多重構造による居心地の悪さが全編を支配している。

主人公を中心としたドラマ部分は、「置かれた場所で咲きなさい」「Let it go!(流れに沿って突き進め!)」をテーマにした人間讃歌そのもの。人影まばらなキャバレーで(自分なりの)幸せを熱唱するシーンに感涙。何よりも、歌詞の内容がイイ。
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