1973年アカデミー作品賞、主演女優賞、助演男優賞受賞作。
映画史に残る圧巻の音楽映画!
近年の「ララランド」などの音楽映画にもおそらく大きな影響を与えたであろう、金字塔的名作です!
公開時、まだ若かった私にはこの映画の奥行き、多角形さが分からなかった。
ただ、ライザミネリーの顔と歌だけが強烈だった。
いや、ワンシーン、あの頃も印象に刻んだ場面がある。
ナチスの大合唱シーン。若い俺!いいところに目をつけてたじゃん!😜
よい映画は映画の内容そのものが多角的、3Dになっていて、何重もの有機的結合形になっている。
本作がまさにそう!
まず、ライザーミネリーが所属するキャバレーのショーの世界と現実の1930年代のベルリンの社会。
挿入されるショーは単に歌やダンスではなく、その時代のベルリンの雰囲気そのものも表している。
甘美で、時に退廃的で、
時にエログロであると思えばロマンチックであり、
差別的でもあるが、ヒューマンでもある。打算的な面も強調される反面、理想を歌い上げるもする。
渾然一体の文化、社会の中から、
湧き上がってき始めたのがナチズムなのである。
音楽は素晴らしい!
音楽はヒューマンである!
確かにそのメッセージは正しいように聞こえるが、
じゃあ、あのナチスの大合唱はどうなんだ?!
そのシーンをちょっと説明しよう。
のどかな休日の公園のような場面。
一人の中1くらいの男の子がきれいな、まだ幼さの残る声で歌を歌う。
聴き入る人々、口ずさむ人々、カメラが下がって少年の全身を映し出す。
そこにナチの紋章が、
歌はさらに広がり、勇ましさを増す。立ち上がる人々、訝る老人が一人だけ映るがその勢いを止めることができない!
逆のシーンは多く見てきた。「カサブランカ」にはフランス国歌の大合唱でナチスを圧倒する有名な場面もあるが、
逆って、すごくないですか!!
キャバレーで繰り広げられるショーはライザミネリーの生き方も表している。
打算的な生き方をしようと面もある彼女に対して、「マネー」の歌が流れたり。
良いと思ったことが実は悲劇の始まりという意味では、ユダヤ人大富豪の娘とドイツの若者の恋愛模様の挿入もすごい!
あの結末は一見ハッピーなんだけど、、、わ!なんという裏玉!、悲劇の匂い!自ら恋人との結婚のためにユダヤ教徒になる彼。
その後起こるであろうことをくどくど説明しない。すごい!
ライザーミネリーとアメリカボーイとの恋模様と実に複雑に多面的に描いている。
マイケル・ヨークが演じるこの男性はバイセクシャル。
この恋愛模様は、二人の価値観や将来の夢、そして、ドイツ人青年将校との三角関係で、またもつれていく。
そして、終盤、ベルリンも街も、二人の関係も、大きなうねりの中に呑み込まれていく。
でも、ライザーミネリー演じるサリーは、その中でも、ラストに高らかに歌い上げるのだ!
「人生はキャバレー!」と。
私はこの道で生きていくと!
一つの色では語りつくせない。
ああ、名称ボブ・フォッシー!もっと観たかった!