こたつむり

ウォーク・ザ・ライン/君につづく道のこたつむりのレビュー・感想・評価

3.2
★ 君の可愛さを伝える為だけに
  僕の人生がある

往年のスター、ジョニー・キャッシュの伝記映画。…なのですが、スミマセン。彼のことをよく知らずに鑑賞しました。

だから、全般的に引いたポジショニング。
彼の楽曲に「懐かしいなあ」となるわけでもなく。意外な事実に「え?そうなの?」となるわけでもなく。物語の起伏が緩やかなために、淡々と「なるほどねえ」と頷くばかり。

正直なところ、思い入れがないと微妙な作品です。夕陽が差し込む部屋で、ラジオから流れる曲を耳にしながら彼女とキスをした…そんな思い出があれば、きっと楽しめるのでしょう(そんな甘い曲ではないと思いますが)。

ただ、思い入れがなくても。
グイグイと伝わってくるのは、ジョニー・キャッシュのダメな素顔。衝動だけで結婚したり、クスリに逃げたり、浮気した挙句に離婚したり。一世風靡したスターの生臭い部分が露わになってるのです。

そんな彼の根底に流れているのは劣等感。
贖罪の意識を持ちながら、一生懸命に手を伸ばしても、ずぶずぶと下半身は沼にハマっていく…そんな姿に共感を抱けるのか?…と試される物語なのです。

彼を演じたのはホアキン・フェニックス。
なんでしょうかね、この説得力は。彼の生い立ちと“かぶる部分”があるからなのでしょうか。圧倒的な目力にクラクラなのです。

また、監督の拘りを感じたのが音質。
自宅鑑賞でもビンビンと低音が震えていましたよ。これは劇場で鑑賞していたら、もっと臨場感があったでしょうね。さすがは『グレイテスト・ショーマン』を手掛けたジェームズ・マンゴールド監督です。

まあ、そんなわけで。
歌に拘るアメリカならではの伝記物語。
“伝説のプロポーズ”など、映画化に相応しいエピソードはありますが、全般的に淡泊な印象は否めません。出来ましたら、鑑賞前に題材の予習をオススメします。

最後に余談として。
ヒロインを演じたリース・ウィザースプーンですが、『カラー・オブ・ハート』の意地悪い表情が頭の片隅にあったので、本作のポジションに違和感満載でした。でも、考えてみれば、それだけ存在感があるということ。濱田マリさんに似ているだけじゃあないのです。
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