単に私の育ちか頭が悪いということだと思うのだけれど、コントに似ていると思った。というよりはコメディだ。もちろん5月革命などのバックボーンを知らないと少し難解に感じられるところはあるかもしれない。だが、ゴダールは理解するものではなく感じるものだと私は勝手に思っている。つまり「mind」ではなく「heart」で理解したもの、それが答えだ、と。コロナ禍の最中に観てしまったからか、ラストのスーパーマーケットを襲うカタストロフがそのまま今の日本を描いているようでこのゴダールの眼力には唸らされる。というより、この映画が描く労働者階級の落ちぶれぶりは今の日本のプレカリアート/ワーキングプアのそれと瓜二つと言ってもいいような気がするのだ。だが、そう考えてみると彼らほどの逞しさを持ち得ていないことを日本人のひ弱さと見るか、あるいは貞淑さと見做して安心するかが鍵となってくるように思う。観る者を拷問にかけるかのような退屈なショットもさほど(「さほど」だけど)見当たらないので、ゴダール初心者にもお勧めと言えるのではないか。