たにたに

わが青春に悔なしのたにたにのネタバレレビュー・内容・結末

わが青春に悔なし(1946年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

【顧みて悔いのない生活】2022年143本目

戦後間もない黒澤明監督作。

1933年。国家が軍国主義の体制をとる中で、京大教授の八木原とその娘・幸枝、そして学生運動を指導する2人の男、糸川と野毛が学問の自由を求め抵抗する。

安定思考の糸川と、正義を重んじる野毛。そして幸枝との三角関係が描かれながら、幸枝という逞しい女性をかなり大胆に表現している。

特に印象的なのは終盤。
スパイ疑惑で収監された婚約相手である野毛が獄死し、責任を感じた彼女が野毛の農家に無償奉仕するシーンだ。
スパイ一家のレッテルを貼られ、村人からの露骨な嫌がらせ。そして泥まみれになりながら稲を植える姿。
幸枝の別人への豹変が苦しみを交えて露骨に表現されており、そのやりすぎ感に困惑してしまったのは否めない。

現代の若者が見たら、なりたくない職業に農家がランクインしてしまいそうなほどである。


教授の娘でどこか傲慢なお嬢様であった前半。「あなた、秘密をもっているのね。その秘密が欲しい。ね!ね!」と言っていた彼女が、後半にはやかんの口からそのまま水がぶ飲みしてますからねぇ。恐怖です。



「顧みて悔いのない生活。。顧みて悔いのない生活。。」
そう言い聞かせながら、再び野毛の実家へと帰っていく幸枝。
何度も繰り返されるその言葉からは、そう自分に暗示し、そう思いたいだけなのではといたたまれない気持ちになる。
たにたに

たにたに