まりぃくりすてぃ

わが青春に悔なしのまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

わが青春に悔なし(1946年製作の映画)
2.0
攻めの映画。サッカーに譬(たと)えれば、“ボール支配率7割以上で、シュートも驚異的な数”。しかし、“枠内”は一つもなく、………勝ちあぐねる。
理念上の説得力はもちろん大あり。東京裁判史観の正邪は措(お)いて、治安維持法時代への総括はそりゃもう日本のリスタートに必須だっただろうから。
滝川事件の頃には「戦争妨害」なんて言葉があったんだ? 可笑しすぎて、私もこれからバンバン妨害したくなる!!(一人で笑ってるだけなんだから、共謀罪での逮捕なんてできないよ、当局さん。)

さて、この攻めの映画のワントップ────原節子さんの、映画女優力(スクリーン映え度+演技力+奥底からの存在感)は既にひとたび1939年の『東京の女性』でおそらくは満点を叩き出しており、、それが49年『晩春』・53年『東京物語』での空前絶後な感じ(一女優を超え、銀河系アンドロイドへと昇華してしまえる羽衣!)を纏うまでの、過渡期(戦中~敗戦直後の国家もろともの暗中模索期)にいた彼女の、貴重な格闘記録の一つがこの映画なのかも。
的外れだったら彼女の霊に謝りたい。でも、原さんって、ひょっとしたら本当にダイコンだったんじゃないか、見方によっちゃ美人でさえもない、と鑑賞中にタブーを胸中で呟いた私は、田んぼで汗土にまみれる彼女の力演(特に、転向した男との再会シーンでの神々しい一睨み)にも、こんな目つきの男友達を持ってる私なもんだから感動まではしなかった。(むしろ農作業にしても泥塗られの顔にしても、『裸の島』『どぶ』の乙羽信子さんの奮迅の方が非凡だ。わが眼には。)
ともあれ、“試合終了まぎわ、何本かのシュートは枠内だった”ね。

[東京国立近代美術館フィルムセンター “原節子選集”]