松原慶太

東京オリンピックの松原慶太のレビュー・感想・評価

東京オリンピック(1965年製作の映画)
3.7
64年東京オリンピック公式記録映画。レニ・リーフェンシュタールの「民族の祭典/美の祭典」の影響を感じさせつつ、60年代中盤の映画としてアップデートされている。なにより、昭和30年代東京の、古さと新しさの共存する風景をながめることができるのがいい。

この映画、当初は黒澤が監督する予定だったが、予算でゴネて降板。亀倉雄策に推薦された市川崑がひきうけたのだとか(最終的に、製作費は当時のお金で3億5千万までかかった)。

野地秩嘉「TOKYOオリンピック物語」によると、本作品を製作するにあたり、劇映画のカメラマンだけでは、スポーツ撮影がこころもとないので、報道各社から専門のカメラマンを大量に動員。

撮影にはいると、市川崑は絵コンテだけ渡し、宿舎でずっとマージャンをしていたらしい。それでも撮れたものをみると、市川崑の画になっているのが不思議である。

この映画をめぐっては、ドキュメンタリーと呼ぶにはあまりにも映画的な演出が過多であると「芸術か記録か」論争が巻き起こった。たしかに、撮影にはいる前に、すでに脚本を詳細に仕上げていたフシがうかがえるし、ナレーションも、あまりにも説明的かつ抒情的すぎるような気はする。

しかし、超望遠映像で選手の表情や身体のパーツの一部を切り取り、観客席の太ったおじさんの二重あごがゴクリと鳴る瞬間を捉えるなど、市川作品らしい映像のダイナミズムは素晴らしく、現代の感覚からすると、著名な映画監督がドキュメンタリー撮るのだから、これくらいの作家性はあってしかるべきだろう、などと僕は思った。

「映画」として最初から最後までおもしろいとは言い切れないかもしれないが、造成中の雑多な東京の町並み、新婚ホヤホヤの美智子様の美しいお姿、60年代当時の人びとのファッション。結果的に、時代をそのまま真空パッケージしたような「ドキュメンタリー」として、とても貴重な作品だといえる。