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東京オリンピックのほーりーのレビュー・感想・評価

東京オリンピック(1965年製作の映画)
3.9
【市川崑特集⑧ 本来だったら今ごろは】

今回で市川崑特集は一旦終了。

さて今回でレビュー850回目ですが、本来この時期にあるはずだった東京オリンピックを偲びまして(笑)、市川崑が手掛けた伝説的な記録映画『東京オリンピック』を。

むかし長谷川町子の『いじわるばあさん』の四コマでも取り上げられていたが、当時、記録映画にしてはあまりにも芸術的すぎると大物議をかもした作品。

脚本が奥さんの夏十さんはじめ、白坂依志夫、谷川俊太郎が手掛けていて、このメンツを見ただけでもただの映画にならないことは容易に想像できる。

ハードル走でいきなり無音になる演出も斬新だけど、やっぱり体操のシーンのサスペンスみたいな音楽が流れるのも強烈。女子100m背泳ぎのスタートで俯瞰になる場面も美しい。

八王子の村ん中での自転車競技も、沿道で眺めている農家のおじさんたちと颯爽と自転車で走り抜ける欧州の選手たちの対比が面白い。

面白いのは選手の活躍している姿だけではなく、陸上競技に関わるスタッフやプレスセンターの記者たち、そして観客たちの顔を多くカメラで捕らえている。

チラッと観客として長嶋茂雄と王貞治の顔が見える。あとチラッとと言えば、神永・ヘーシンク戦で眼光鋭いお爺さんの顔のアップが映るが、あれは三船久蔵十段のはずである。

この『東京オリンピック』はオリンピック大会を記録した映画ではなく、オリンピック大会に関わった人々を記録した映画なのである。

画面に出てくる人々すべてがオリンピックに参加している。

ラストの閉会式で各国の選手がみんな一緒に和気あいあいと行進する場面、そしてエンディングで流れる古関裕而先生のオリンピック・マーチに素直に胸を打たれる。

やっぱり来年こそは是非オリンピックができるような世の中になってほしい。

■映画 DATA==========================
総監督:市川崑
脚本:和田夏十/白坂依志夫/谷川俊太郎
製作:田口助太郎
音楽:黛敏郎
撮影:宮川一夫/林田重男/中村謹司/田中正
公開:1965年3月20日(日)
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