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メランコリアのchaooonのレビュー・感想・評価

メランコリア(2011年製作の映画)
3.8
ラース・フォン・トリアー監督の『アンチクライスト』『メランコリア』『ニンフォマニアック』からなる鬱三部作。
今作はだいぶ前に観たけど、改めて3部作意識して再鑑賞。

監督自身も鬱病を過去に患っていたことは有名だけど、3部作と謳うだけあって、全部陰鬱だったわ〜🌀
この3部作は異常性を帯びた性の表現と病んだ心、そしてシャルロット・ゲンズブールが一貫して登場してるな🤔

映画としては今のところ『ニンフォマニアック』がトリアー作品の中では1番好きかな?って感じだけど、これは1番分かりやすくて共感もしやすい雰囲気があったなぁ。
今作はタイトルからして、ばっちり『Melancholia=鬱』だし、ド直球。

何より映像と音楽と、空気感が美しい✨✨
他作品に比べても、うわっ😨って感じの展開もないし。
冒頭のアート感溢れるカットの連続にため息が出る✨✨

初見時は、監督のことも知らず、当時24ロスに陥っていた旦那が何本も借りてきたキーファー・サザーランド作品の一つとして鑑賞したのだけど、なんじゃこらな展開とラストの着地にただただ唖然だったことは覚えている😧
結末が分かった上で観ると、序盤からそのセリフやシーンの一つ一つを丁寧に観れた気がしたかな。

心を病んでしまった妹ジャスティンと、夫や子供に恵まれ社会的地位や幸せを手にしてる姉クレアの2人を、それぞれ主軸にした2部構成。
姉妹の対比と、精神状態の揺れ動きがとても面白い!
第1部は、結婚式という格式や常識のあり方や幸せを感じるはずの場で、不安定になっていくジャスティンの姿や、壊れていく関係性(既にぶっ壊れてるものもあったけど)。
第2部は、地球へと接近する惑星メランコリアに不安を隠せないクレアの姿と終焉に向かう世界。

地位も名声も富も、地球滅亡の前には何の意味もなくて、その身ひとつ、人間の在り方が問われる。
全ての終わりを前にして、身に纏っていたはずの武装は全て脱ぎ捨てられ、剥き出しの自分の心と対峙する。

社会的に下と見なされる、精神疾患者や、弱い女性や子供。
それに対して地位や富を持つ存在や、強い男性。
普段の世界での力関係が、異常事態を前に逆転が生じたように見えるのが、面白い。
なんか第一部でも、本来敬われる対象である上司や親、裕福な夫たちが、とても嫌〜な感じで描かれてるのも、ゾゾゾとする。

他作品でもよく登場してた黄色いライティングがこちらでも局所的に使われているけど、効果的でとってもうっとり❣️
1部は黄色、2部は惑星メランコリアの青味がそれぞれキルスティンを照らし出してて印象だったなぁ✨✨
印象的と言えば、キルスティン・ダンストの眩いばかりに美しい肢体も最高💖

ステラン&アレクサンダーのスカルスガルド親子が、劇中でも親子役っていうのが、また熱い🤤

時として「持っている」人というのは、幸せとは程遠いのかもしれない。

賢い人間は察するのに長けている故に苦悩する。
使命や勇気に燃える人は、何か手立てはないかと葛藤しては絶望する。
大事なものを持てば持つほど、失うことを恐れる。
守りたい人がいるほど、その重荷に押しつぶされる。

何も「持っていない」人の方が、状況のありのままを受け止める、間口が広いのかも。

何を持って「正常」とするかは、状況や見かた次第なんだなぁと、考えずにはいられなかったなぁ。

子供のときに、将来のことが不安だったり、自分自身や何かに失望したときに、「世界が終わってしまったら、こんなこと考えなくていいのになぁ〜」ってたまに考えたこと、誰もがあるよね。
明日自分だけが死ぬのは嫌だけど、みんな一瞬で消え去るなら別に悲しくはない。
そういうちょっとした気の迷いとか現実逃避を、より深く美しく思い詰めた映画という形に昇華してくれたような映画だったなぁ〜。
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