ヴェルヴェっちょ

メランコリアのヴェルヴェっちょのレビュー・感想・評価

メランコリア(2011年製作の映画)
4.3
幅広い解釈を生む傑作に出合いました。
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のラース・フォン・トリアー監督が描出した異色のディストピア。

<第1部 ジャスティン>
新婦ジャスティン(キルスティン・ダンスト)は、新郎マイケル(アレクサンダー・スカースガード)とともに結婚パーティーの行われる姉夫婦の豪邸に向かっていた。
ところが、2人の乗るリムジンが立ち往生し、2時間以上の大遅刻。姉のクレア(シャルロット・ゲンズブール)とその夫ジョン(キーファー・サザーランド)が出迎えて、ようやくパーティーが開始される。
義兄のジョンが私財を投じて開いてくれた盛大なパーティーだったが、母ギャビー(シャーロット・ランプリング)の悪意に満ちたスピーチなどを目にして、ジャスティンは次第に虚しさを覚えてゆく。
「バカなマネはしないように」とクレアから釘を刺されたものの、会場を離れて情緒不安定な行動を繰り返した後、霧が立ち込める早朝の道を愛馬で駆ける。
橋のたもとで空を見上げたジャスティンは、そこにさそり座の赤い星アンタレスが存在しないことに気付く。

<第2部 クレア>
7週間後。クレアは、アンタレスを遮って地球に異常接近する惑星メランコリアが気にかかっていた。
ジョンは、「惑星は地球に衝突することはない」と妻を宥める一方で、非常時の用意も欠かさない。
そんな中、憔悴しきったジャスティンがやって来る。支えられなければ歩くこともできないジャスティンだったが、夜には外出し、小川の辺で月よりも大きくなった惑星にうっとりと見入る。
ネットで地球と惑星の軌道が交わる画像を発見して狼狽するクレア。 それとは対照的に、「地球は邪悪よ。消えても嘆く必要はないわ」と語るジャスティンは、惑星の接近につれて心が軽くなってゆく…。

対比が美しい。
第1部の黄色と第2部の青み。妹と姉。惑星という極大世界と邸という極小世界。その対比が押しつけがましくないのもまたいい。
第1部では精神を病んだジャスティンをキルスティン・ダンストが迫真の演技で魅せる。 手持ちカメラにより手ブレを起こした映像は、彼女の動揺を表しているようにも思える。

第2部では、接近する大惑星に相対して不思議と回復していくジャスティン。
一方、姉のクレアは死におののき不安定な状態に陥る。

終焉を前に人は何を思い、誰と、どう過ごすのか。 深淵な問いが、繊細な映像にのって投げかけられる。
これは何度見ても印象が変わってくる映画だろう。