おさかなはフィッシュ

メランコリアのおさかなはフィッシュのレビュー・感想・評価

メランコリア(2011年製作の映画)
3.5
ラース・フォン・トリアー監督による、メランコリア讃歌。

すぐそこにある「憂鬱」、ある者は見て見ぬふりをしたり、ジャスティンのように目を逸らせなくなってしまったり。何一つ欠けたもののない生活を送っているように思われても、ふとしたとき、それに気付いてしまう。
第2部ではそれが惑星という形で誰の目にも顕在化する。ジャスティンのターン! まくるぞ、まくるぞ。ずっと鳴っているワーグナーの「愛の死」。媚薬によって顕になる、トリスタンとイゾルデの愛。死はそれと等しく、甘美である。全裸になって川辺で寝転ぶ。美しいシーンだった。妻子を残して一人自死する夫。最後にわが子の手を離してしまう母。一方、ジャスティン。幼子の手を握っていたのも彼女だった。あぐらをかいてどっしりと座る様子はもはやブッダ、悟りの境地。頼もしいことこの上ない。
死を肯定したいのではない。いずれ誰にでも訪れるが、それまでどう生きるか。少しばかり可笑しくたって。「魔法のシェルターを作ればいい」「誰でも作れるの?」「スチールブレーカー叔母さんなら」、「じゃ 枝を探しに行きましょう」。

日々生活していると、ときには落ち込むことだってある。そういうときには「すべての優れた人間は、哲学者であれ、政治家であれ、あるいは詩や芸術における天才であれ、みな憂鬱質である」というのを思い出している。アリストテレスが言っていると、高階先生の本に書いてあった。とくに優れてはいなくたって、私は映画や芸術をやるのに向いているので、一日二日落ち込むのくらいしょうがないわねと、また元気になる。この映画もそういう奴らへの讃歌だと勝手に思っている。……とか言って、全然違ったらどうしよう!



第2部が始まった直後の「お前もか!」。

車中の新郎新婦、揺れる手持ちカメラが何とも言えない不穏さを醸し出す。これから猟奇殺人犯が現れて惨殺されそうな雰囲気。
など考えていたら、この映画はそうではない部分も多いけれど「ドグマ95」というのがあるのをはじめて知った。世の中まだまだ知らないことばかり……!

冒頭のイメージ集。夜、屋敷の庭に並ぶ人物たち。私の好きなデルヴォー感があってよかった。
ラース・フォン・トリアー監督の作品、思えば観たことがないものが多いので、他にも観てみたいな。



ずっと家の中にいるのも気が塞いでしまうので、近くの公園まで本を読みに行く。外はどことなく、やさしい終末感がある。

そんなことを考えていたので、終末ものだったかなと思い出し鑑賞。
なんでもかんでも楽しんでいきたいな。