Mikiyoshi1986

冬の猿のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

冬の猿(1962年製作の映画)
4.7
明日11月15日は72歳で他界したフランスの名優ジャン・ギャバンの命日。
没後41年目を迎えます。

フランス古典映画の名匠アンリ・ヴェルヌイユ監督の最高傑作と称される本作「冬の猿」は、
戦前から活躍する国民的スター俳優ジャン・ギャバンと、「勝手にしやがれ」の主演によって一躍ヌーヴェルヴァーグの顔となった新進俳優ジャンポール・ベルモンドが唯一共演を果たした逸品。

この親子ほど歳の離れた二大スターが織り成す哀愁に満ちた男たちの物語、ほんと何度観ても痺れちゃいます。

歴史上ナチス占領の要所となったノルマンディーを舞台に、
戦中から断酒し続けるホテル経営の老人アルベール・カンタンと、訳ありの旅人ガブリエル・フーケが"酒"と"旅"で乗り越える人生の冬とは。

かつて極東遠征軍に従事した元水兵カンタンの心の奥にはいつまでも中国・揚子江の風景があり、
輝かしかった青春を呼び起こす為、そして何よりもWW2からの現実逃避の為に酩酊によって彼は心の旅に耽っていたのでありました。

一方、スペインで腕をならした闘牛士ガブリエルもまた、かつての栄光や恋人を思い起こし、ある目的によってここに流れ着いた男。

アルベールの妻を演じたシュザンヌ・フロンもこれまた素晴らしい演技を魅せてくれます。

11月1日の万聖節に決壊する男たちのカタルシス!
へべれけに酔っ払う二人の演技はとにかく楽しそうだし、
羽目を外しまくった花火のワチャワチャ感も必見です。

ラストはプラットホームと電車と音楽、そしてジャン・ギャバンの背中が醸し出す哀愁により、モノローグの一文が自然と目頭を熱くさせるのも名画の貫禄であります。

またギャバンが放つ「伏せろ!」の空耳はもはや空耳ではございません。
Mikiyoshi1986

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