滝和也

ニューヨーク東8番街の奇跡の滝和也のレビュー・感想・評価

4.1
瓦礫の中の古いアパート…。
地上げの嵐吹く東8番街の
その住人たちは誰もが
願っていた。
誰か私達を助けて下さいと…。

そこに小さな小さな奇跡が
舞い降りる…。

「ニューヨーク東8番街の奇跡」

スピルバーグ総指揮のアンブリン社が送る本当に心温まる優しさに溢れたSFファンタジーです。その魅力は言葉に尽くせぬ程、素晴らしい。アメリカの良心の様な作品です。

ニューヨークイーストビレッジ、再開発の波に飲み込まれたその街に、たった1軒だけ残ったダイナー付アパート。地上げ屋の嫌がらせは凄まじく、住人たちを悩ませていた。ダイナーを営む家主のフランクは妻のフェイの痴呆が進み、友人だった老夫妻が出ていき、途方にくれていた…。売れない画家、落ちぶれた老チャンプ、男を待つ妊婦と住人は皆問題を抱えていた。その中、小さな小さな、奇跡が彼らの元にやって来る。意思を持った円盤。お皿程の大きさの宇宙からの来訪者達は充電させてもらったお礼に壊れたものを直し始め…。

子供の頃…忙しい靴屋さんが眠っている間に小さな妖精が靴を作ってくれると言う童話を聞きました。それを元に現代風にアレンジしたストーリーです。

何から何まで心温まる内容で、終わった時に感じるのは、まるで素晴らしき哉、人生!の様な後味です。出てくる方、全てと言って良いほど皆優しい。悩みを抱えている方程優しくなれるのでしょうね。勿論ストーリーを盛り上げるため、酷いことは起こるのですが…。

小さな円盤。可愛いですよ〜。充電以外にも目的があって、最初ご夫婦なんです。後からオチビちゃんが出てきて、更に可愛い。意思があって、音や目のライトで感情が伝わる。勿論CGのない時代の特撮ですから、手作りなんです。その暖かさがまた素晴らしい(^^) CGには無い暖かさがそこにあります。

円盤達が生きているかの様に見せるその技術は勿論スピルバーグ印ですから素晴らしいのですが、演出、演者の技術と相まってのものです。主演の老夫婦を演じるジェシカ・タンディとヒューム・クローニン。流石ベテラン。特撮との息もピッタリ。特に悲しみから痴呆になってしまったジェシカの優しさと愛が詰まった演技が本当に素晴らしい(^^) 二人はこの時期コクーンにも出ていて乗ってましたね。また老チャンプ、ハリーを演じた黒人俳優フランク・マクレーはセリフは3つ4つしかないのですが、その愛らしさはキャラクターにあっていて素晴らしかったです。

スピルバーグ総指揮、監督の作品はこの時期、グレムリンやETなど数多ありますが、その根幹を担うのはヒューマニズムに沿ったエンタメです。故に甘さや陳腐さを感じてしまう方もいるのですが、それこそ、実は王道であり、アメリカの良心なんですね。そのベタさが私は大好きです。予算は多分他作と比べてかなり少ない小品ですが、この作品には偉大なる愛があります。

小さなお子さんも楽しめますので、家族で見てほしいですね。オススメです(^^)
滝和也

滝和也