爆裂BOX

アイデンティティーの爆裂BOXのレビュー・感想・評価

アイデンティティー(2003年製作の映画)
4.4
ジェームズ・マンゴールド監督による傑作サスペンス・スリラーですね。
豪雨によって陸の孤島と化したモーテルに集まった様々な男女11人が、人、また一人と殺されていくという「そして誰もいなくなった」を彷彿させる舞台設定とストーリー展開(実際作中でも言及されます)が引き付けてくれますね。人形の代わりにモーテルの鍵がカウントダウン刻んでいく所も。次々と姿の見えない殺人鬼に殺されていく所はスラッシャー映画のような怖さもあります。登場人物もワガママ女優やそのお抱えの元警官の運転手、彼がうっかり跳ねてしまった女性のマニュアル復唱して行動しようとする夫と口のきけない息子や故郷へ帰ろうとする娼婦、殺人犯とそれを護送する刑事と新婚カップルと娼婦嫌いのモーテルの管理人など登場人物たちもキャラ立ってますね。
乾燥機に入れられた生首や「食人族」みたいにバット口から突っ込まれてる死体などちょっとしたグロ描写もいいアクセントになっていると思います。
それとは別に死刑執行前夜に新たに見つかった証拠から再審理を受ける事になる死刑囚の連続殺人犯マルコムのストーリーも合間に挟まれ、この二つのストーリーがどういう風につながるのかという期待も持たせてくれます。
先住民墓地の呪いでは?という説まで上がり、実際モーテルから逃亡した殺人犯が何故かモーテルに戻って来たり、死体が消えたりと不可解な現象が起きてオカルトサスペンスになっていくのかと思いきや、そこで二つの話が繋がるどんでん返しになっていきます。ただ、どんでん返しと言っても序盤や再審理のシーンでかなりわかりやすく丁寧にヒント散りばめてるので読めやすい事は読めやすいんですよね。
役者陣もジョン・キューザックやレベッカ・デモーネイ、刑事役だけど怪しすぎるレイ・リオッタにアマンダ・ピート、クレア・デュバル、ジェイク・ビュージイにアルフレッド・モリナ等実力派俳優たちの熱演も見応えあります。ブルイット・テイラー・ヴィンスの終盤の目の動かし方とかすごかったな。
終盤で「ああ、やっぱりこの人が犯人役なんだな」と思わせて一段落してからのラストは初見時衝撃受けましたね。一つ目のどんでん返しはこれの為の前振りだったのかな。この犯人の正体も博士の言葉にヒントがあったんですね。自分の弟は初見時に犯人見抜いてて個人的にはそれもビックリしました(笑)割と後味の悪いラストではあるけど、張り巡らされていた伏線が回収されて衝撃のラストなのでパズルがハマっていくような快感もあります。
全体的に地味目な作品ではありますが、今再見しても非常に楽しめたサスペンス・スリラーでした。