takanoひねもすのたり

アイデンティティーのtakanoひねもすのたりのレビュー・感想・評価

アイデンティティー(2003年製作の映画)
3.5
これまた大分昔に観た作品だけど、某大工監督作品がこれと似ているとのことで、どんな類似点あったかふと確認したくなったので見直してみた。

2作の共通点。
・クローズドシチュエーション
・ひとりひとり消えていく
・多重人格(人格の支配)
・バールストン先攻法
・〇〇が欺かれる

大きな違いはオチと演出。
某大工監督作品は、消えたとみせかけて、ホラー的な演出でばーん!と復活。
観てる側は「消えてねぇー!(やっぱりw)」だったのに対し、
この作品は「消えてねぇー!(こいつどこで裏をかいたんだー!?)」というミステリーの謎解き部分、真犯人の意表さが大きな違い。

ディテールは向こうがストーリーとは関係ない部分にまで細かく設定されてると思う(監督の拘り的に)

でもこちらも良作。面白い。
ミスリードが複数細かく仕掛けてあり、気がつくと「あ!」と思うし、あいつかこいつか何こいつかー!という驚きが大きい。

但しこの作品のストーリーは、弁護側のマリック医師の手落ち感が残る。
観てる側には真犯人が「こいつか!」という視覚的な驚きを得るけど、作中本来はハゲの太ったおっさん一人の頭の中での話。

本人格は殺人を犯しておらず、彼の中の殺人者の人格が消滅すれば刑の執行を中止できると弁護側が請求し執行日直前の異色の審問の場。
予めモーテルに人格が集まるように医師がお膳立てしてあるのが前提。
検事、検察、弁護側と本人、雁首揃えてその経緯を見守る一夜の話。





::::::::ちょいネタバレ注意:::::::::

医師は彼の資料を読み、更にセッションを何回か行っているはず。
彼の中にいる11の人格のうち誰が殺人を行っていたのか、怒りが大きいのはどの人格なの推測できなかったのだろうか。

他の10人格は医師とのセッションで接触があり(行動指示等)その反面他の人格の背後に潜んで表出していない唯一の人格を察知しながら「彼はどういった人格なのか?」と疑問を持たなかった医師が謎。
そこに懸念を持つべきだったのに。

医師の裏をかいた人格がお見事でした。