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25日・最初の日のbackpackerのレビュー・感想・評価

25日・最初の日(1968年製作の映画)
3.0
第二次大戦下の1941年のソ連に生まれ、アニメーションの神様と称される偉大な作家ユーリ・ノルシュテイン監督が、美術監督のアルカージィ・トーリンと共作した、27歳のデビュー作。

帝政ロシアの下権力に胡座をかき民衆を苦しめる資本家・貴族・ブルジョア・聖職者・憲兵らの支配者階級に対し、怒れる民衆が打倒のため蜂起。「すべての権力をソビエトへ」をスローガンに、支配者階級を打ち倒す様子を描きます。
わずか12分の短編ながら、静から動への展開、画面のオーバーラップ、同一動作の繰り返し、暗い色調に映える共産主義のシンボルカラーの赤、高揚する音楽等、様々な要素がもたらすインパクトは大きく、ロシア革命の持っていた熱を感じさせます。

本作の、民衆の怒りが、さながら真っ赤な津波のごとく、怒涛の勢いとなって押し寄せ、支配者階級を飲み干していく様は、私利私欲を貪り、国民のための政治から離れていく汚れた民主主義・腐った政治体制に邁進する現代日本においても、共感をもって受け入れることができるのでは?と感じております。
私は民主主義と共存していく社会主義、いわゆる民主社会主義には興味があり、バーニー・サンダース議員を応援したアメリカの若者層にも共感があったりしますので、本作の示した怒りの奔流はかなり目を見張りました。

コロナ禍で、これまで見ないよう蓋をされてきた多くの歪が顕在化し、社会不満をより身近に感じる機会が増えました。
目に見える大きな成長が可能な社会ではなくり、個人の人生モデルも多様化・流動化している現代。
寄る辺なき社会となり、未来に希望を抱けず、将来への不安はいや増すばかりとあっては、社会不満は噴出しても、解決策は見当たらず。
そんな世界を生きる上で、ふつふつと煮えたぎる怒りが、いずれ大きな力となって、本作のように吹き荒れる嵐となるのか。自分ごととして、常に注意して生きていきたいところです。
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