きんゐかうし卿

カエル少年失踪殺人事件のきんゐかうし卿のネタバレレビュー・内容・結末

カエル少年失踪殺人事件(2011年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

 

自宅にて鑑賞。韓国産、原題"아이들...(「子供達...」の意・英題"Children...")"、'91年3月26日統一地方選挙日に大邱近郊の臥竜山付近で発生した事件(オープニングで実話ベースとのテロップ有)に基づく。ホームズ役“ファン・ウヒョク”の(立振る舞いが知人ソックリな)R.スンリョンがミスリードを誘う辺り迄がピークで狂言回しのワトソン役“カン・ジスン”のP.ヨンウが真相に迫り出す中盤頃から急激に失速する。物語的に作り手としての解釈が必要だったのかもしれないが、一気に興醒めした。70/100点。

・凝ったカメラワークや構図、目立った編集処理等が殆ど無いオーソドックスで素っ気ないドキュメンタリーの様な画面。その飾り気の無い映像故、伝わるものもあり、本作ではその効果が遺憾なく発揮されている。

・韓国の地方都市の外れ、彩度を抑えた陰鬱な濁った色調に重厚で暗然たるBGMと出だしはこの上無く佳かった。屠殺場で追い詰められた“キム・ジュファン”のP.ビョンウンが怒り乍らも嗤う表情が素晴らしかったが、このキャラクターが登場してからがそれ迄の展開を打ち消し、全体を台無しにした感がある。この中盤以降も同じトーンで描いていたなら、間違いなく名画の一作になりえたと思われる。

・鍵として、R.スンリョン演じる“ファン・ウヒョク”教授がL.フェスティンガーが提唱した認知的不協和理論を説くシーケンスは、この物語の解釈に役立つ布石の一つである。これを受け、K.ヨジンの“キム・ジョンホの母”が告白する嘘は、いかにも韓流らしいエピソード乍ら、だれがちだった流れに一石を投じ、ピリッと締めた。更に加えて、親子愛の二段構えとして、散々疑惑を掛けられた“キム・ジョンホの父”であるS.ジルが五人の子供達と再開するラストシーンは、ベタではあるものの涙腺を刺激する。

・'86~'91年に華城市近辺の小さな村で発生した犠牲者10名と云われる連続強姦殺人事件“華城連続殺人事件(『殺人の追憶('03)』)”、'91年にソウル特別市江南区で起こった9歳の少年の誘拐事件“イ・ヒョンホ誘拐殺人事件(『あいつの声('07)』、『殺人の疑惑('13)』)”、そして本作の“カエル少年事件”の三件を指して、俗に“韓国三大未解決事件”と称されている。三件とも当時の韓国の法律で、発生から15年となる'06年に時効が成立しており、仮に真犯人が名乗り出ても法的処罰は受けない。

・我国で'12年3月24日に公開された際には、一部の劇場でタイトルにちなみ、蛙のグッズを持参すると千円で鑑賞出来た“カエル割引キャンペーン”が実施された。

・鑑賞日:2017年9月9日