horahuki

愛の調書、又は電話交換手失踪事件のhorahukiのレビュー・感想・評価

3.5
私はあなたの奴隷ではない!

勝手にマカヴェイエフ特集②
「古代文明では性器は偶像崇拝されていたんだよ!だからセックスは大事!もっとみんな大っぴらに話すべき!でも人間は改造されるから性器が無くなるかもしれないよ!」とかいう演説をいきなり聞かされるトンデモな長編二作目!

物語の骨子部分は前作とそれほど変わらず、男女が良い感じになる→彼氏が仕事で留守中に彼女が浮気→喧嘩別れのパターン。しかも仕事中で拒否する彼女にチャラ男がボディタッチ連発しながら強引に誘惑→彼女落ちるっていう流れも同じ。マカヴェイエフさん「仕事中の女性」にフェチ感じてたんじゃない?🤣それと寝取りにも。あと今回も黒猫が何度も登場!きっと猫好きなんだと思う😂

ただ、この彼女が溺死体で発見されるところから物語が始まって、死体の解剖と生前のラブストーリーを並行させて描くスタイルは本作特有。そして、唐突なフッテージや識者の演説を大量に挿入するコラージュの連発は前作以上にやりたい放題になってた😂なんというか自由すぎる!笑

旧ユーゴスラビア版ボディスナ『神の聖なるネズミ人間』と同様に本作でも価値観の侵略をネズミに託し、圧倒的な繁殖能力故に人間を圧倒する(=価値観を上塗りする)ことを危惧する演説がそのまま当時の政権批判となっており、「ネズミ駆除業者(でも政権サイド)」の彼氏の主張は共産主義の熱狂的な歌によって掻き消される。

監督の後の作品においても性と政治の関係性についての監督独自の分析がなされるようだけれど、冒頭に書いた言葉のとおりその面影は本作から既に色濃く現れている。彼氏に向かって「私はあなたの奴隷ではない!」とキレる彼女が他の男と浮気するように、一方に隷属する姿とそれに反発する姿に何かを見出そうとしているのでしょう。そう考えると、仕事中の女性に対して欲情する男を2作連続で描いてきたことに対しても規範のレールと性の自由の対比が見えてくるような気がする。

性という自由の剥奪を堂々と演説したり、当時の政権サイドが教会を倒壊させていく映像を流しつつも、どこからともなく教会の鐘の音が聞こえてきたりと、検閲通過するつもりある?ってくらいの露骨すぎるモチーフの連続が前作以上に散りばめられているのは笑っちゃうのだけど、ゴダールのようなジャンプカット、後のキアロスタミのような建物の構図、無駄に長いワンカット映像、さり気なく主体ではなく手前側に意識を向けさせ、その期待に応えるようなパンするうまさ等々映像的にそれなりに見どころ多かった気がする!
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