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愛の調書、又は電話交換手失踪事件のROYのレビュー・感想・評価

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愛とセックスと殺人のメカニズム

ユーゴスラビア・ブラック・ウェーブ運動

Will there be a reform of man? Will the new man retain certain old organs?

■INTRODUCTION(VHS裏面より)
デビュー作『人間は鳥ではない』で映画界の注目を集めたマカヴェイエフ監督。2作目であるこのサスペンス・タッチの愛憎劇は再度カンヌ映画祭批評家週間でプレミア上映されたのを始め、世界各国の映画祭で上映され、世界の映画人にその名を広めることとなった初期の傑作である。“国際批評家賞”受賞、“ニュー・リーダー誌 ベスト10”入選。

美しいワーキングガールが男と出会い恋に落ちる。蜜のように甘い生活をおくる2人。しかし殺人という最悪の結末がおとずれる。なぜ男は彼女を殺さなければならなかったのか?

■ABOUT
ベオグラードの警察関係者から直接仕入れたという話を映画的に発展させたもの。セックスの効用を説く人類学者の意見と、犯罪学者の猟奇殺人論が交互に挿入され、井戸から引き上げられた若い女の遺体にまつわる事件の内容が明らかにされていく。

■STORY
電話局で働くイザベラはアラブ系の衛生捜査官アーメッドと知り合い、やがて同棲するようになる。ネズミ退治に人生を賭けるアーメッドは暇さえあれば、そのことに関した論文を書いている。享楽的なイザベラはやがて仕事一本槍の夫に不満を覚え、郵便配達夫のミーチャと浮気をするが、夫はそれを知り半狂乱になる。朦朧とした彼を追い井戸にたどり着いた彼女は彼ともみ合ううち、その中に突き落とされてしまう……。

■NOTE I
ユーゴスラビアで最も評価の高いアートハウス映画監督ドゥシャン・マカヴェイエフが手がけた、アーメッドとイザベルの恋愛をめぐる狂気の俯瞰。ドキュメンタリー風の撮影とアーカイブ映像の使用により、全体主義体制への愛に満ちた暗示から人体解剖に関する教育映画まで、冷たくニュートラルな立場から作品を見ることができる。この映画は非伝統的な物語を導き、文体の弁証法に基づき、ほとんど、あるいは全く前触れもなく、一方から他方へと急速に移行する。

効用のあるセックスに関する著書を持つある作家、医師アレクサンダル・コスティッチが映画の冒頭に投げかける「セックスに興味はあるか」という問いかけ。『愛の調書〜』は、殺人事件で幕を閉じるため、愛と死の二項対立に煽られている。エロス/タナトスのコンセプトは、この2つの要素の間の闘争を示す接続詞「又は」を入れたタイトルに表れている。

コスティッチ医師の他に、犯罪学の専門家である別の医師を紹介する講義のようなシークエンスがある。アレクシッチ医師は、先の登場人物と同じように、科学的な正確さと感情の欠如をもって、ラブストーリーの悲劇的な結末にうまく対処している。

UbuWebより
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