むぅ

普通の人々のむぅのレビュー・感想・評価

普通の人々(1980年製作の映画)
3.9
「美味しい?」
「普通」
「なんかすみませんね」

"恋人が一人暮らし"という人生初のシチュエーションに出会った若かりし頃、作ったこともないのに作ってみた鮭のムニエルへそんな感想を頂いた。肉じゃがとかロールキャベツとか"所謂"を敢えて外した自分の思考回路が、今でも手に取るようにわかるので絶妙に恥ずかしい。

"普通" と"大丈夫?"
使わないように気をつけている言葉だ。誰かに何かを伝える際、"普通"は使っていない、と思う。
"大丈夫?"は使わないように意識しているが、ちょっと自信がない。そして"大丈夫です"という"やんわり拒否"は多用している気がする。何かを勧められたり、確認される時に特に使いがちだな、とこれを書きながら思った。
これ本来の使い方ではないよな。

シカゴ近郊に住む4人家族。
長男の死により、バランスを崩してしまう両親・弟それぞれの弱さ、繊細さ、そして強さを描く。

両親にも弱いところがあるのだ、そう気付いたのはいつだったのだろう、と思う。自分の方が上手に出来ることがあるのだと驚いたのも。でも、敵わない、といつも思うのはその愛情。父は静かに、母は明るく注ぎ続けてくれている。

家族でも、全てが人それぞれ。
向き合う事も、時に逃げる事も、どちらにも強さと弱さがあるのだなと思った。
親が思っている以上に、子供は親のことを細かく見ていることってあるのではないか。
親には子供がいなかった人生の時間がある。それぞれの形があるけど、子供にとっては人生の時間だけ親の存在はある。
もがき苦しむ弟の姿を観ながら、そんな事を思った。そして彼の母親の弱さでもある強さが辛かった。

『明日、君がいない』を思い出してしまった。
私の大切な人達の"大丈夫じゃない"のサインに気付けるようにありたい。

先日、春巻きを作ったという友人に
「春巻きは料理2回分」と言って「ものぐさ」と言われた。
仰る通り。
なので春巻きは作らないけれど、久しぶりに鮭のムニエルを作ろうかな。
むぅ

むぅ