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普通の人々のomarushiのレビュー・感想・評価

普通の人々(1980年製作の映画)
4.0
観ていて辛かった。母親は、決して家族の意味を問い直そうとはしない。何事もなかったかのように、これまでの生活を続けていこうとする。隣人宅のパーティでは、絶好の機会とばかりに、何事もなく元気な自分の姿を人々に印象づけようとする。また、毎年クリスマスにはどこかに旅行していたからという理由で、そんな状況でもクリスマスに旅行しようと考える。彼女は郊外のライフスタイルが外から作り上げる家族の枠組み、そのイメージにすがりつくことによって、問題を回避しようとする。一方コンラッドは問題の対処の仕方が分からず、自ら創り出した暗い穴に引きずり込まれて行く。父親は2人を、そして、絆を取り戻そうと奔走する。 そこで、父親は、何とかして彼女を現実に向かわせようとするが、すべては徒労に終わってしまう。そして最後に、「きみの正体がわからなくなった」という台詞。ひたすら郊外の平穏な日常に同化しようとする彼女の存在は、対話が可能な生身の人間ではなく、実体のないかたちだけの妻、母親に見えたに違いない。日常に潜む小さなつっかかりが、ある出来事を境に徐々に心を侵食し、問題を露わにする。その危機に私たちは如何に立ち向かうか、普通の人々の生活を鋭く描き出した作品。
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