芹沢由紀子

普通の人々の芹沢由紀子のレビュー・感想・評価

普通の人々(1980年製作の映画)
3.8
おそらくですが、小学生くらいの時、父親が観ていて、となりで私も見ました。当然ながらよく意味は分からないけどすごい威力があって、名作なんだなと感じました。

成長し、自分の家庭を持ってから再び鑑賞すると、とても心を持っていかれます。
ストーリーや展開自体はひたすら地味で、暗いにも関わらず、その分人物たちの心理描写がち密で細やかで引き立ちます。
役者が全員めちゃめちゃうまい。

本当に彼らは20年間家族をやってきている、という雰囲気。冒頭の数分でこの家族のヒエラルキー、うわべっつらの平穏な家庭がグラグラしていることがわかる。
事なかれ主義で、優秀エリート人生を生きてきた父親、つねに強くたくましく美しい妻に人生を先導されてきたんだろう。でも、息子たちへの愛情という面ではこちらの方が人間味がある。

母親が植物の配置を直すあたりや、いちいち他人や親にまで上から目線なのとか、神経質さをうかがえるエピソードのちりばめ方がすごいうまい。

息子は美形で、壊れそうなガラスの10代の危うさを存分に発揮した緊張感のある演技をしてくれて、見ているこっちはずっとヒヤヒヤしてしまう。


以下はネタバレあるかも。※要注意



救いはカウンセラーの先生かな。彼に胸の内を爆発させるシーンでは私も号泣してしまった。
家族の問題は家族で解決したいんだろうけど、他人を入れたほうがいいなと教訓。
父親の「まるで塀の上に座っている気分。落ち着かないんだ」と、「君は強いと思っていた。だが、弱い」というセリフ、心にとても響いた。
円満解決じゃないけど、私の中では、二人で支えあって、人生を乗り越え彩のあるものにして行ける、そんな力強さを感じていいラストだった。
芹沢由紀子

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