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グリーンマイルのabeeのレビュー・感想・評価

グリーンマイル(1999年製作の映画)
4.6
【グリーンマイルーー死へと続く道。】

映画を観る媒体がテレビの地上波がほとんどだったあの頃、ブラウン管に穴が開くほど観た作品。

そう、「ダイ・ハード」と同じく、吹き替え版しか観たことがない上、大幅にはしょられたバージョンしか観たことがなかった。
これはきっちり観なければ‼︎

3時間越えの作品を地上波の2時間に纏めていたとかもはや暴挙と思われるのですが、以外と凄く上手にはしょっていたようです。
かといって、オリジナルに無駄なシーンが多いかと言うとそうでもないんですよね。

私は「ショーシャンクの空に」より圧倒的に「グリーンマイル」派なんですよ。
この2つの作品は全くの正反対の物語です。
「ショーシャンクの空に」は絶望の中にも希望が満ち溢れた物語ですが、「グリーンマイル」に希望はありません。希望はありませんがこの世界に存在するちょっとしたファンタジーに心が温かくなったり、人との繋がりを大切に感じたり、愛に溢れているのです。

死を待つ人々の集められた刑務所の中にあって悲壮感を一切感じさせない人々。
そこに暮らす人々には皆同様に死が約束されているにも関わらず、コミカルにストーリーは進む。
犯罪を犯していようと看守たちは囚人たちに人間として接していて、罪を償う瞬間を少しでも辛くないようにごく普通の日常を刑務所の中で描いている。
それでいて死の瞬間は誤魔化すことなく真っ直ぐ描いている。

ジョン・コフィが口ぐせのように言う。
「ボス、疲れた。ひどく疲れた。」
と言う言葉。
それは知りたくもない世界の全てに触れなければならない神に選ばれし者の本音。
ジョン・コフィはある意味ポールたち看守に救われたにも関わらず、ポールはその罪を生涯背負い生きていく。人より長い「グリーンマイル」を、皆と同じスピードで。

ということで、刑務所という狭い世界の中に善と悪がきっちりと描いてあり、悪は栄えず、善行も必ずしも報われないという、悲しいかなまるでこの世界の縮図のよう。
それでもこんな世界にも小さな奇跡が溢れていると、皮肉な結末以上に画面から溢れ出す優しさが心に残る作品です。

マイケル・クラーク・ダンカンは見た目とは裏腹にその存在が画面に優しさを出す凄い俳優さんです。
余談ですが、設定上とんでもない巨漢であるジョン・コフィを演じたマイケル・クラーク・ダンカン。実際は刑務所所長・ハルを演じたジェームズ・クロムウェルの方が大きいことにびっくり。
マイケル・クラーク・ダンカンは195cm、ジェームズ・クロムウェルは200cm越えの長身だそうです。
もちろんカット割やカメラワーク、編集によるものもあるとは思いますが、マイケル・クラーク・ダンカンの存在感の大きさがよく分かるデータだなと思いました。

3時間越えという尺の長さで鑑賞をためらっている方には自信を持ってトライして欲しい、紛れも無い名作であります。
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