BON

ショック集団のBONのレビュー・感想・評価

ショック集団(1963年製作の映画)
4.0
強烈なサスペンスであり、メロドラマでもあり社会的寓話とも捉えられる破壊的な1作。「神は滅亡を願うときまず人を狂人にする」という何やら不穏な一言からスタート。

殺人犯を暴くために精神病患者を装う新聞記者の精神崩壊の物語。10日間で撮影したとは思えない人間の精神の脆さと社会的悪事の様々な問題を描く。

新聞記者のジョニーがストリッパーの恋人を妹に仕立てて精神患者として精神病院に潜入。発狂して南北戦争の南部連合の将軍のつもりでいる朝鮮戦争に参加した兵士や、人種差別を受け精神崩壊し、KKKの一員だと思っている黒人、原子爆弾の開発に関わったトラウマで6歳児に退行している元原子物理学者に情報収集するために近付く。

多様なアメリカンドリームの敗者達、被差別者のキャラクターを使うことで、病院全体をアメリカと隠喩して皮肉り、商業映画と乖離したフラーのプロパガンダを肌で感じる。面白いことに、受けた差別で生じた自己嫌悪からなのか、自分とは反対の差別側の思考を持つという暴力的で完全なディストピア。そしてミイラ取りがミイラに。

ストリッパーの美しい恋人が小さくなって夢に出てくるのチープなCGや、光の使い方なども効果的でフラーの全てが詰まっていると感じるような名作。

ベルトルッチ『ドリーマーズ』(2003)の冒頭部分の使用や、レオ様主演のスコセッシ『シャッター・アイランド』(2010)に影響を与えたとされている。
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