あきらむ

ソドムの市のあきらむのレビュー・感想・評価

ソドムの市(1975年製作の映画)
4.4
昨今、無垢に伸び伸び育った人々の生活を娯楽でぶち壊す系の話は漫画でありがちですが、人間を使った映像だと迫力が違いますし、大量の男女が最悪な目に合わされるので、1人の被害者に対して感傷的になり過ぎなくて済むというか、心地よい虚無感が広がってきます。そしてソドムの市はスカトロなどガッツリ描く癖に映像として品がありました。豪邸はお洒落だし、衣装の細部にもこだわりがあり、音楽は綺麗で、台詞も哲学者や詩人を引用していることからくる雰囲気でしょうか。あと、4人の支配者がかなり真剣に自分の意にそわないことに怒り狂うんですよ。この欲望が純粋な性欲から来ているように思えて、基本気持ち悪いけど、感動します。ここまで麻痺?させてもいいんだって。
どんなことをされても天使のような顔をしていた青年が最悪の目にあう場面はしばらく忘れられない気がします。美しい被害者にもそれぞれ癖と名前があるので。支配者の4人がちゃんと全員の名前と顔を覚えてるところに唯一の人間みを感じました。人間みってなんだ?倫理ってなんだ?となるのが醍醐味な映画です。
人糞の章にて、あまりにも気持ち悪いので、どうせつくりものだろと言う思想に逃げないように頑張るのが大変でした。リアルに私も想像してみることで吐き気がしてきました。
娼婦が絢爛な衣装で踊りながら変態客話や変態エピソードを語って聞かせる場面が一番狂いそうでした。語り口と単語があってなさすぎて、字幕でなかったらもっと凄まじい印象なんでしょうね。最後の拷問趣味の婦人の低い悪魔的な笑い声だけが心地よかった。

原作はかなり前に読んだため嫌悪感が強かった場面しか記憶になかったのですが、それよりは細かい描写や最後の方の極めて残酷なあたりが無かったように思えました。登場人物のケツ穴の描写とかめちゃくちゃ細かかったので。
しかし、よくこれ映画化しようと思ったねパゾリーニ。