マヌエル・ウェルガ「サルバドールの朝」
実在の人物を描く事も、史実が主題であるのも別に悪いというわけではありません。
回想形式のドラマ構成も、銃撃戦の演出も、サブカルチャーの描写もどちらかと言えば手慣れたもの。
ですが全ての劇作術に技法とやらでどうにでも処理できるという驕りがショットごとに透けて見えるのは私だけでしょうか?
一見良質に見えそうなこの作品、マヌエル・ウエルガという聞き慣れぬ作り手の野心によって大きく歪められた風景の廃墟が(散りばめられた)のではなく(散らかって)おります。
恐らくは観客が一番、衝撃を受けるだろうとタカをくくって撮ったと思われるクライマックスは辟易を通り越して呆れました。
小林正樹「切腹」のしつこすぎる竹刀切腹シーンに匹敵する醜さです。
立ち止まる慎みに欠ける映画からはなるべく遠く離れていたいものです。