Hagieen

座頭市のHagieenのレビュー・感想・評価

座頭市(1989年製作の映画)
3.6
勝新太郎監督、主演。
座頭市シリーズ最終作。

牢の中で知り合った鶴と賭場で再会した市は、鶴の巻き上げられた金を取り返した事で五右衛門一家と揉める。
放たれる刺客を返り討ちにしながらも旅を続ける。
孤児を集め育てる少女おうめと知り合い、しばらく滞在するもそこは五右衛門一家と対立する赤兵衛一家の縄張りで市は抗争に巻き込まれていく。

座頭市シリーズの復活を掲げ、勝新太郎が時間をかけて制作を行った。
勝新のイメージをスタッフがまとめ上げて映画に整えていったようだ。
色々とアイデアは盛り込まれているが、前述のようにイメージの断片を繋いでいったような印象はある。
それでいて面白いのは勝新演じる市のキャラクターが起っているからだと思う。

心を通じる達人の浪人、対立するやくざの抗争、可憐な少女との邂逅、色っぽいお姐さんとの混浴、等々・・・
これらのエピソードは過去作の再生産ではあるが、当時の技術で長らく中断していたシリーズを復活させたかったのだと思う。
また英語詞で歌われるJOHNNYの主題歌など、新しい事も取り入れようとする姿勢も見える。

出演陣も癖が強い。
肩で風を切る感じの陣内孝則、勝新の長男・奥村雄大は本作でデビュー、いきなりやくざ五右衛門役だ。
五右衛門一家としては蟹江敬三、ジョー山中、そして無駄に脱いでいた樋口可南子。
敵対するやくざに内田裕也など非常にロック色の強い配役。

シリーズ前作から時間は経過しているが、勝新のアクションに関しても衰えはなく素晴らしい殺陣を見せる。
これをきっかけにシリーズ再開が期待されたが、残念ながら最後の作品となってしまった。
おそらく撮影中に起きた死亡事故などの影響や、その後の麻薬所持の影響もあったと思う。
色々と破天荒で問題も多かった人だが、その情熱と愛すべきキャラクターは今では稀有な存在だったと思う。
Hagieen

Hagieen