Kumonohate

座頭市のKumonohateのレビュー・感想・評価

座頭市(1989年製作の映画)
3.7
シリーズ26作目。25作から16年、間にテレビ版4シリーズを挟んで復活した、勝新太郎主演版「座頭市」最終作。監督:勝新太郎。

「折れた杖」ほどでは無いが、こういう画が撮りたい、こういう動きにしたい、こういうシチュエーションにしたい、という瞬間瞬間の感性(おそらく勝自身の)に支配されながら、ギリギリのところでストーリーとしても成立させている、という印象。また、過去の映画版で使われたネタがちょこちょこ出てくるし、テレビシリーズは未見(放送当時、数本見た記憶はある)だがそのネタも使われているらしいので、そうした過去の名場面を繋いで繋いで、ギリギリ1本のストーリーに仕立てた、という印象でもある。勝新太郎による三味線の即興演奏も劇伴に使われているそうで、そういった意味では、感覚第一主義とストーリー性を融合させた職人芸的作品。

ただ、やはりこれまでのシリーズを見慣れた目には、勝新太郎の巨人ぶりがひっかかる。

日頃は頭と腰を低くして時々ズッコケながら生きている盲目の優しい按摩さん、という座頭市像は、齢57歳の大俳優ではもはや再現不可能だということなのか、とにかく、仕込み杖を抜いていないときの市に凄みがありすぎる。露天風呂での樋口可南子とのセックスも、サービス満点のシーンなので大歓迎ではあるのだが、旧来の市と比べると余りに堂々としすぎている。

ただ、テレビシリーズを全部順番に見れば印象は違うのかもしれない。映画版25本→テレビ版100本→映画版1本を、一続きの物語としてとらえれば、本作において市が孤高の大物へと変化しているのも宜なる哉である。
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