優しいアロエ

悪魔のシスターの優しいアロエのレビュー・感想・評価

悪魔のシスター(1973年製作の映画)
3.6
 初デ・パルマ。「ヒッチコックがB級ホラーを撮ってみました」というフレーズで売り込みたい、異色ながらも案外きちんとミステリーをやっていく作品。

 ホラーかと思いきや次第に精神分析じみていくところ、主人公らしき人物が途中で殺されてしまうところから、骨格は『サイコ』と云える。そこに、3度にわたる『裏窓』的覗き演出と、女性の目玉に極限までクローズアップする『めまい』演出が加わっていく(ポランスキーの『反撥』にも同じオマージュあり)。しかも劇伴はバーナード・ハーマンだから、これは『アンダー・ザ・シルバーレイク』にも負けない露骨なヒッチコック・リスペクトで固められた作品となっている。

 そのほか、映像表現やストーリーのアイデアも斬新で、偏執狂的な演出にもクセがあって、今後のデ・パルマ作品への期待は大きく膨らんだ。

 ただ一方で、身体障がい者を狂気じみた娯楽に昇華した点には顔をしかめてしまった。『悪魔のシスター』という邦題も無神経に隠喩しているが、本作は結合性双生児をホラーというミスリードで扱っている。アイデアとしては確かに面白いのだが、どうにも倫理性に欠けるように感じてしまい、手放しには称賛しづらい作品であった。
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